本研究は、北海道内外に現存する「義経蝦夷渡伝説」を描いた画像資料の所在調査・現地調査を行い、関連する画像資料のデータを集積すること、集積した画像の分析を行うことで、「義経蝦夷渡伝説」の受容の様相を明らかにすることである。また、この調査に伴い、道内の絵馬の所在調査、道内外のアイヌ絵の調査を行うことも視野に入れている。平成25年度は、上記の目的と単年度研究計画に基づき、以下の調査研究を行った。 1.道南地域(函館市、上ノ国町、江差町、八雲町、乙部町、松前町、福島町、知内町、北斗市)および網走市の社寺、博物館、資料館にて、絵馬をはじめとする関係資料の調査・写真撮影・情報収集を行った。特に、ともに義経蝦夷渡伝説を描く市立函館博物館所蔵の《アイヌ風俗絵馬》と上ノ国八幡宮所蔵の《義経とアイヌ絵馬》は、重要な作例であり、詳しく実見調査を行うとともに、国立国会図書館などで関連文献の調査を行った。 2.小樽市総合博物館、函館市中央図書館、北海道大学附属図書館が所蔵する義経蝦夷渡伝説に関する錦絵、刊本類の調査を行った。こうした錦絵や刊本類におけるアイヌの表現にはさまざまなバリエーションがあり、「蒙古人」のように描かれる場合や、アイヌ絵と同様に描かれる場合も見いだせることが明らかとなった。 3.国立民族学博物館、神戸市立博物館、安芸高田歴史民俗博物館、滋賀県西教寺、長野県真田宝物館、静岡県常楽寺に所蔵されているアイヌ絵の調査を行った。 以上の調査をもとに、関連資料のデータを整理し、画像の分析・比較を行った。その成果をもとに、北海道史研究協議会にて口頭発表を行うとともに、同会の会報に報告要旨を掲載した。また、所属研究機関の研究紀要に成果の一部を報告した。
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