本研究の調査で明らかとなった18件の「義経蝦夷渡伝説図」を一覧に整理した。そのうえで、各図を絵の内容ごとに三つのグループに分類した。すなわち、蝦夷地に渡る義経一行を描いた図、義経一行と蝦夷人の合戦を描いた図、義経と彼に敬意をはらう様子のアイヌを描いた図、の三つである。この三つ目のグループに属する作例は、主に、北海道と関わりの深い作者の手によるもの、北海道の神社に所蔵されるものであり、この図は北海道で独自に発展し、定型化したとみられる。さらに画像の分析から、この図は、義経以外の伝説的な人物を描いた図を参考にして、生み出された可能性が高いことが明らかとなった。
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