研究課題/領域番号 |
24720090
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
山本 啓介 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (50601837)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 室町和歌 / 内裏月次和歌 / 和歌会部類記 / 後柏原天皇 / 公宴続歌 / 三条西実隆 / 和歌会 |
研究概要 |
本年は四年計画の第一年次にあたる。 当初の予定通り、まず和歌会部類記の調査に関しては、宮内庁書陵部蔵「御会部類」、京都府立資料館「内裏御会」等の資料を入手し、その他出張調査を行い、分析を進めた。また、併せて室町後期の古記録類である「実隆公記」「元長卿記」「宣胤卿記」等の調査も行い、和歌会古記録データベースの作成を進めた。 これらの調査を進める中で、室町期の内裏和歌の様相をこれまでわかりえた範囲でまとめ、今後の考証の基盤とするために、研究成果の一端を和歌文学会7月例会(於早稲田大学)において「和歌会の形式と詠作意識との関わりについて―室町期を中心に―」と題して口頭発表を行った。その概要は次の通りである。永正五年当時の後柏原天皇の内裏月次和歌においては、参会・披講を行う御会始は参加者が減少傾向にあり、それは出席者である公家達の困窮が要因と考えられること、その一方で参会も披講もない内裏月次和歌は動乱の中でも安定して行われていること、参会を必要としない月次和歌の詠作形式は、参加者への負担が少なく、時局の影響も受けにくい、継続しやすいものであったと見られることを指摘した。また、この月次懐紙和歌で、全員が同題で詠む通り題の形式の際には、内容が類似する場合も少なくないはずだが、ここでの作は類似・重複は珍しく、それぞれ異なる趣向で詠まれたものが多いことを指摘した。また、こうした詠作傾向から、作者達が詠出前に類似を避けるように相当意識していたこと、さらに、古記録に散見する「談合」等の記事から、各々の詠進後にも加筆・訂正・調整が行われていた可能性を述べた。 以上の研究により、後柏原天皇の内裏月次和歌の様相の一端が明らかとなり、今後の資料調査においての一定点を構築することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り、基礎的な資料調査は順調に進んでいる。ただし、まず室町期内裏和歌の実態についての基礎的な考証をおこなうことが重要であるとの判断から、和歌文学会での口頭発表を行い、その成果を論文にまとめることに多くの時間を割いた。そのため、和歌会部類記の資料調査及び和歌会古記録データベースの作成に関しては、当初予定したほどには進行していない状況にある。この点については次年度以降の課題であるが、先に口頭発表を行ったことで、本研究の最大の課題である、室町期の和歌会の様相を踏まえた作品読解研究という点においては大きな進展があったと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
概ね当初の予定通りである。 和歌会部類記の資料調査を行う。具体的には陽明文庫・立命館等の所蔵資料を調査する予定である。また、その分析を進め、その系統整理とデータの抽出を行う。 和歌会古記録の中の関連記事・関連用語の抽出も進める。主たる対象としては前年からの「実隆公記」「元長卿記」「宣胤卿記」に「二水記」「十輪院内府記」等も加えて調査を行い、「和歌会古記録データベース」・「和歌会要語用例データベース」の作製を進める。 以上の調査を通じて得た重要な成果は適宜学会及び雑誌等に発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
和歌会部類記の資料調査のための出張。具体的には陽明文庫・立命館・学習院等を予定している。 関連する発表などが行われる各学会への出張。 関連古記録・研究図書の購入。具体的には「十輪院内府記」「後法成寺関白記」等である。
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