研究課題/領域番号 |
24720090
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
山本 啓介 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (50601837)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 和歌 / 室町 / 和歌会 / 後柏原天皇 / 三条西実隆 / 部類記 / 作法書 / 披講 |
研究実績の概要 |
前年に引き続き、古記録類の中の和歌会関連記事の調査と分析を行った。特に和歌会部類記については、国立歴史民俗博物館蔵高松宮本の調査を行い、主要伝本及び記録内容について整理を進めている。この成果は近日中に発表する見通しである。 その他『実隆公記』を中心に同時代の和歌会古記録記事の抄出と分析を継続して行い、古記録データベースと和歌会関連用語のデータの整理を進めている。 上記のデータの整理と分析の成果は、近時刊行された『和歌文学大辞典』(古典ライブラリー、2014年12月)において項目執筆を担当した「詠進」「披講」「懐紙」「続歌」「着到和歌」等の和歌会関連用語や、「和歌会次第」「和歌之条々」などの和歌会関連資料などにも反映されている。 また、これまでの研究成果を踏まえて、2014年10月に開催された中世文学会秋季大会(於金沢大学)において、口頭発表「披講を前提としない和歌の詠作と鑑賞態度について」を行った。本発表は参会・披講が行われなかった室町期の内裏月次和歌が、声に出さない「見」ことによって鑑賞されていた場合があったこと、そうでありながら、そこに詠進された和歌は声として享受されることを前提とした構成の和歌が少なからず見出せることを指摘し、当時の鑑賞意識と作風の関係について論じたものである。本発表の成果は「中世文学」(2015年刊)に掲載される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『実隆公記』を中心とした古記録類からの和歌会関連記事の抄出と分析については、その記事が膨大であるため、進捗状況は当初の予定ほどには捗っているとは言えない状況である。しかしながら、それらの網羅的調査を継続する一方で、特に室町和歌の在り方として重要な内裏月次和歌とその周辺に考察の焦点を絞り、その実態と作品との関わりを中心に分析を進めている。その成果は上述の通りであり、研究は概ね順調に進展していると言える。また、和歌会関連古記録の中でも一つの定点となり得る和歌会部類記についての基礎調査も予定をほぼ終了し、現在その整理と分析を進めており、これについても概ね順調な状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、当初の計画に即して、順調に研究は進んでいるので、これを今後も継続する。ただし、古記録からの和歌会関連記事の抄出については、今後も継続する予定ではあるが、網羅的なデータベースの完成は膨大な時間を必要とする。したがって、後柏原天皇と三条西実隆の時代を中心と設定し、その前後における様相について主な考察を進めることとする。また、和歌会部類記については、研究成果を随時発表する予定である。
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