今年度は、研究論文を1本、短い研究報告記事を1本発表し、研究発表を1回行った。論文としては、「朝鮮半島における日本語書店の展開――戦前外地の書物流通(1)――」『跨境 日本語文学研究』(第1号、2014年6月)がある。朝鮮半島における日本語の書物を扱う書店の歴史および書物取次の歴史を概観した。具体的には、書店数増加の追跡、個別例として日韓書房の検討、教科書取次の歴史の発掘、鮮配設立騒動の追跡などを行っている。記事としては「外地書店を追いかける(4)――台湾・新高堂の発展――」『文献継承』(金沢文圃閣、第26号、2015年3月)がある。台湾の日本語の書物を扱う書店のうち、代表的な店である新高堂について、『台湾日日新報』をもとに調査したものである。第四回となるこの記事では1915年前後を扱っている。研究報告としては、「Rethinking Circulation of Japanese-Language Books between Japan and its Oversea Territories before the World War II」と題する発表を、ICC Research Unit “Japanese Literature in Motion”(上智大学、2015年1月23日)において行った。第二次世界大戦以前における外地各地域における日本語書店の展開を広く見渡しつつ、同時に大阪屋号書店や東京堂などの書物取次の活動について報告した。他に、北京において戦前の日本語書店に関する実地調査を行っている。満洲、樺太、ハワイなどにおける書店の歴史についても、資料の収集と分析を行った。
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