研究課題/領域番号 |
24720092
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
吉丸 雄哉 三重大学, 人文学部, 准教授 (10581514)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 日本文学 / 近世文学 / 戯作 / 滑稽本 / 式亭三馬 / 年表 |
研究概要 |
申請者が以前「研究スタート支援」で作成した滑稽本出版年表の補訂を行った。「研究スタート支援」の段階で調査できていなかった、専修大学向井文庫を用いて、内容の修正と増補を行うことができた。滑稽本出版年表は滑稽本研究の基礎となるものであり、これの拡充および正確性を高めることは広く有効である。 その他、昨年九月に再開された大東急記念文庫を始め、「研究スタート支援」で見ることができなかった文庫を訪れ、年表の拡充につとめた。 あらたに東北大学狩野文庫のマイクロフィルムを手に入れることができ、今まで詳しく内容を調査することができなった滑稽本の実像がわかるようになった。 滑稽本の主要作者である式亭三馬の年表を作成した。式亭三馬の年譜に関しては本田康雄『式亭三馬の文芸』(笠間書院、昭和48)の巻末に年表がある以外は存在しなかった。式亭三馬の著作の影印を収集し、式亭三馬の伝記研究として詳しい棚橋正博『式亭三馬』(ぺりかん社、平成6)と比較しつつ、年表を作成した。題簽や刊行年などを正確に把握できた。作成の特長は、従来の研究では曖昧であった部分、特に堀野屋・万屋との関係に新しい事実を見出すことができたことである。式亭三馬は十返舎一九と並んで、滑稽本の作者の中心人物であり、滑稽本の研究に大きな前進をもたらした。滑稽本研究に利点があるのみならず、狂歌本への入集状況を事細かに調査したため、狂歌壇との関係が明瞭になり、狂歌研究にも貢献する研究となった。 研究成果は、「三重大学日本語学文学」24号(平成25・6刊行予定)に掲載予定である。紙幅の関係で、全部を載せることができないため、まずは生誕の安永五年(1776)から万屋との関係に変化をきたす文化四年(1807)までの前半生の年譜である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
専修大学向井文庫の調査により、年表の補訂はかなり進んだといえよう。しかしながら、予定していた東京以外の土地での調査に赴く余裕がなく、本年度の実施は見送りとなってしまった。時間的余裕のなさが一因であるが、時間を見つけて調査を進めなければならない。 また、主要著書の解題の執筆を予定していたが遅れている。年表の補訂に思ったよりも時間がかかったことが挙げられる。心学道話や人情本に関して、収集し、読解が進んでいるが、これらと滑稽本との表現の比較に関しては、まだまだ準備段階にとどまっているといえる。 データのWEBによる公開や系統樹図の作成は、申請者のIT技術の未熟により、十分に達成できていない面がある。
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今後の研究の推進方策 |
基本計画は前年度と同じく(1)滑稽本年表の増補・訂正のための書誌調査。(2)系統樹図の作成。を最優先目標とする。 手元に影印やフィルムの収集が進んでいる。閲覧のうえ、年表を作成、補訂しているが今一度内容を確認して正確性を高める必要がある。研究協力者を雇用し、資料の整理について協力を得るつもりである。 研究環境に関して、所属機関の建物が次年度四月より九月まで耐震工事に入る。学内における研究に大きな妨げとなる。よって、本年度に調査が不十分であった、東京以外の土地での調査を次年度上半期は優先させるつもりである。 下半期は上半期での調査結果を踏まえて、年表の正確性を高めると同時に、主要作品に関して系統樹図を作成していく。「素人芝居物」「田舎芝居物」「膝栗毛物」「気質・癖物」「いたずら物」「妙々奇談物」など、同系統の作品群を系統樹図にして、滑稽本の展開が一瞥して理解できるようにする。 また、内容面の調査では、訓性を手掛かりにして、心学道話やよく流布している教訓書と滑稽本との比較を行い、相互の影響関係を調査する。とくに石門心学との比較研究を重点的に行う。とくに滑稽本の成立へ石門心学が与えた影響を考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度に引き続き、調査が済んでいない図書館・文庫に赴き調査を実施しなければならない。よって、相応の旅費を必要とする。 文献や資料の影印やフィルムを購入する必要もある。 資料の整理のため、アルバイトを雇用する必要がある。前述のとおり、データのWEBによる公開や系統樹図の作成は、申請者のIT技術の未熟により、十分に達成できていない面がある。これも研究費を用いて、実施協力を得ようと考えている。
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