研究課題/領域番号 |
24720092
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
吉丸 雄哉 三重大学, 人文学部, 准教授 (10581514)
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キーワード | 日本近世文学 / 戯作 / 滑稽本 / 式亭三馬 |
研究概要 |
前年度に引き続き、申請者がかつて「研究スタート支援」で作成した滑稽本出版年表の補訂に取り組んだ。年表に関しては、完全版を最終年度に発表する予定である。 業績は、滑稽本の主要作者である式亭三馬の年表を、前半生について記した前年の「式亭三馬年譜稿(一) ―安永五年から文化四年まで―」(「三重大学日本語学文学」24号、平成25・6)に引き続き作成し、完成させた。後半生である文化五年以降の原稿は前年度のうちから取り組んでいた。三馬の著述に関し、題簽や刊行年などを書誌情報の正確性の高い年表を作成できたと思っている。本年譜の特徴は、善本を多く有する専修大学向井文庫本を参考にしていることで、善本の見つけにくい草双紙に関して、貴重なデータが収録できた。また、三馬とその門人について、狂歌賛や序文の有無を含めてその関係が記せた。研究成果は「式亭三馬年譜稿(二) ―文化五年以降―」(「三重大学日本語学文学」25号、平成26・6発行予定)に掲載が決まっている。 もうひとつの業績は、滑稽本の一分野である茶番本の研究である。茶番本の研究史、口上茶番本の概説、口上茶番の構造の分析、芸能として見た場合の口上茶番の特徴を行った。研究成果は、「芸能としての口上茶番」(『国語と国文学』91巻5号、東京大学国語国文学会、平成26・5)として発表した。当該論文は、先行研究および現存する口上茶番本をすべて網羅している。口上茶番本それぞれに内容の説明を行い、利便性が高い。また、口上茶番の構造が三段なぞであることをつきとめた。口上茶番研究史のなかで、決定的な論文になったのではないかと思っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ほぼ資料が手元に揃ってきたので、滑稽本年表の補訂はかなり進んだといえる。ただ、全国的な図書調査に赴く余裕がなく、本年度も訪書調査が完了していない。次が最終年度のため、年表の漏れをなくすためにも必ずや調査を実施しなければならない。 また、計画していた主要図書の解題執筆も進捗が十分でない。時間をかけて調査することによって、最終年度に公開できるようしなければならない。 心学道話や人情本と滑稽本の表現の比較であるが、調査は進んでいるが、公開の準備が遅れている。インターネットを用いたデータの公開も、書誌情報の補正が続くために先送りになっている。
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今後の研究の推進方策 |
基本計画は過去二年間と同じで(1)滑稽本年表の増補・訂正のための書誌調査。(2)系統樹図の作成。を最優先の目標としている。 影印やフィルムの収集が進んでおり、それぞれ調査して年表のデータを補正している。データが膨大になってしまったため、研究協力者を雇用し、資料の整理について協力してもらうつもりである。 本年度は過去二年に引き続き、年表の正確性を高めると同時に、主要作品に関して系統樹図を作成していく。「素人芝居物」「田舎芝居物」「膝栗毛物」「気質・癖物」「いたずら物」「妙々奇談物」など、同系統の作品群を系統樹図にして、滑稽本の展開が一瞥して理解できるようにする。また、主要作品の解題を作成し、最終年度に公表する予定である。 また、内容面の調査では、訓性を手掛かりにして、心学道話やよく流布している教訓書と滑稽本との比較を行い、相互の影響関係を調査する。とくに石門心学との比較研究を重点的に行う。とくに滑稽本の成立へ石門心学が与えた影響を考察し、成果を発表する予定である。
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