本研究は、日本近世文学の中で、滑稽本と呼ばれる分野の作品を対象としている。研究最終年度の本年度は、本研究の最大の目的であった「滑稽本出版年譜」の作成を完了させた。日本古典籍総合目録データベースで滑稽本に分類される本を中心に、『道中膝栗毛』初編(享和二年刊)の出版から慶応4年までに刊行された作品約350点の年譜の作成を行った。以前の「研究者スタートアップ支援」で作成した内容の大幅な増補改訂を成し遂げた。 本年譜は「書名」「書名読み」「巻冊」「著・編者」「画工」「序跋」「出版元」「影印」「翻刻」「注」「参照」「作品概要」から成る。特徴として、初版本の版元を記載したこと、そして各作品について簡単ながらも概要を付したことである。当初計画していた、分類別の系統樹図の作成には及ばなかったが、本年表によってほとんど作品が分類可能になったはずである。本年譜は平成27年7月刊行予定の「三重大学日本語学文学26号別冊」に「江戸時代滑稽本出版年譜稿」として、掲載される。 今後、滑稽本を研究する予定の者は、本年譜を参照することで、善本の情報や所在、影印や翻刻の有無をすみやかに知ることができ、またそれぞれの内容をすばやく簡単に知ることができるようになった。 本年譜稿は江戸時代の滑稽本の出版年譜であり、未刊におわった滑稽本の写本約30点や明治以降に刊行された滑稽本のデータは基礎的なものを収集したものの、発表できるほどの調査・確認ができなかった。今後、折をみて、これらも発表の機会をうかがいたい。
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