研究課題/領域番号 |
24720101
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研究機関 | 山口県立大学 |
研究代表者 |
木越 俊介 山口県立大学, 国際文化学部, 准教授 (80360056)
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キーワード | 絵入本 / 歌舞伎 / 本屋 |
研究概要 |
本年度は、計画通り、国立国会図書館、大阪府立中之島図書館、大阪大学などに赴き、書誌調査を行った。とりわけ文化期の絵入根本に関しては、おおよその善本を確認することができた。その成果も踏まえつつ、前半は研究発表を行い、後半はこれまでの発表を論文としてまとめた。 具体的には、9月16日に、アメリカ・センター大学にて、絵入根本についての特別講義を行い、挿絵の変化や板元の動きなどについて、英語でプレゼンテーションした。さらに、12月までに、この2年弱の研究成果を論文としてまとめるべく執筆を行い、2014年5月に「絵入根本の成立から定着まで」として『国語と国文学』第91巻第5号に掲載された。これは、絵入根本の成立過程について、絵の様式の変化ならびに、塩屋長兵衛と河内屋太助という両書肆の方向性の違いがどのように関連するのかを追いながら、やがて文化五年頃までには、後年の典型的な絵入読本が生まれるまでを詳細に跡づけたものである。 また、この副産物として、同時期の河内屋太助のもう一つの新たな商品「絵入読本」の端緒ともいえる、曲亭馬琴『月氷奇縁』についても研究を深め、その成果を「詐術としての読本」と題し、『読本研究新集』6号に2014年6月に掲載予定である。 以上、研究課題に対し、予定より早く、2年目に成果をあげることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査に関しては、予定通りではあったが、一部、調査日程が合わない所蔵機関などがあり、全てを完了することは叶わなかった。ただし、この点は想定済みであったので、計画調書に記した通り、下準備などを十分に行った結果、スムーズに進行した。 調査結果の整理に関しても、逐一データ化していったことにより問題なく進行した。 研究に関しては、海外において英語での講義(パワーポイントを使用したプレゼンテーション)を行うことができ、本研究の要点を、外国人に伝えることができたのは大きな成果であった。また、研究論文を2本まとめることができ、本研究における一つの達成を見た。 以上の理由から、全体として、おおむね順調に進展しているとみなすことができる
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今後の研究の推進方策 |
今後は、重点調査機関として、関西大学を予定している。対象となる作品のリストアップは完了している。 網羅的な調査は途上であるものの、課題に対するおおよその見取り図は、文化期に関してはできたので、これをさらに発展させ、同時期の河内屋太助の本屋としての戦略の多角性、ならびに文政期以降の絵入根本のあり様をくまなく洗い出し、ジャンルとしての史的展開についての研究を行う。 また、これまでの調査結果に、さらなるデータを補足していくことで、より説得力のある見解を示すことができると思われる。今後は、絵入根本と絵入読本の様式の相違点に着眼点を移して研究を進めていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画に比し、調査が叶わなかった機関がある分、旅費が余ったから。 未調査機関をスライドして調査することで、予算消化をする予定。
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