最終年度は、これまでの研究成果ならびに口頭発表した内容を文章化することに重点を置いた。具体的には、本テーマの調査の中心となる研究論文を一本、さらに隣接する絵入読本についての研究論文を一本、それぞれ査読誌に発表した。さらに、絵入根本と絵入読本を横断する研究も発展的に行った。具体的には、両者を手がけた数少ない執筆者である浜松歌国という人物に注目し、彼の読本作品(『仮粧水千貫樋』など)にどの程度歌舞伎との接点が見られるか、また挿絵を含めた造本において、絵入根本との共通点が見出せるか、などの点について調査・研究を行った。その成果については、「絵入根本と絵入読本の接点」と題し、12月に京都・演劇研究会で口頭発表を行った。 研究期間全体を通しては、調査の準備態勢が十分であったことが幸いし、1年目は調査、2年目は口頭での成果発表、3年目に文字化し論文を投稿・掲載と、ほぼ予定通り行うことができた。また、成果発表の過程で複数の研究者から有益な指摘をいただき、適宜修正を行うこともできた。さらに、発展的な研究をも開始する余力もあり、これについてはいまだ文字化できてはいないが、今後の補足調査も含め将来的には広く成果を公表することを目指している。
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