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2012 年度 実施状況報告書

曲亭馬琴の治国思想と歴史認識

研究課題

研究課題/領域番号 24720103
研究種目

若手研究(B)

研究機関青山学院大学

研究代表者

大屋 多詠子  青山学院大学, 文学部, 准教授 (50451779)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード日本文学 / 江戸時代 / 曲亭馬琴 / 歴史認識
研究概要

2012年度は三年計画のうちの一年目にあたり、本研究課題「馬琴の治国思想と歴史認識」を推進する上で必要なデータ収集や資料収集を中心に行った。
本研究では、I「馬琴の治国思想と垂加神道」、II「馬琴の尊王思想とその影響」、III「馬琴の歴史認識と国境意識」の三側面からアプローチを試みるが、そのうち、本年度は、特にIIIの研究における調査を進めた。馬琴読本の舞台とされる歴史的背景について、馬琴のその時代に対する認識がどのようなものであったか、馬琴が用いた史籍や『読史余論』、『日本外史』の記述との比較対照を踏まえた分析を行うため、未翻刻の史籍・地誌の収集、馬琴作品の読解、データ収集を進めた。
またIIIの研究と密接に関係し、かつ別の角度から客観的に馬琴の歴史認識を捉え直すための方法・研究として、当初の計画に加えて、馬琴以外の作家による文政期読本の調査・分析を行った。文化年間の山東京伝・馬琴流の読本に倣い、同じ歴史的背景を選びとった作者が、どのようにその時代を描写しているかを比較することで、馬琴独自の歴史認識を客観的に捉え直すことが可能になる点で有効な方法であり、意味のある研究である。その成果として西日本近世小説研究会(よみほんの会)において二回の発表を行った。
その他、I・IIの研究に必要な当時の垂加神道や尊王思想についての資料を収集し、山崎闇斎以下、崎門学派の佐藤直方、浅見絅斎、三宅尚斎らの著作の他、水戸学をはじめとする当時の尊王思想についての一連の著作の収集・読解を進め、二年次、三年次における調査・分析・研究の準備を整えた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度の研究は、研究代表者が、年度初頭の手術・入院、その後の通院を余儀なくされ、体力的な問題から、特に遠方での調査・資料収集が滞りがちであったため、残念ながら、やや遅れ気味であると言わざるを得ない。
ただ前項の「実績の概要」に記した通り、I・II・IIIの研究を推進する上で、近郊で可能な限りにおいては、必要な資料・データ収集とその読解を進め、二年次、三年次の計画を推進するための準備はほぼ整いつつある。二年次の2013年度には、勤務校において三ヶ月間の研究休暇も取得しており、この期間に、研究の遅れを多少なりとも取り戻すことが期待できる。
全体として、遅れがあることは否めないものの、一方で、成果として挙げられるのは、III「馬琴の歴史認識と国境意識」の研究に関して、文政年間の馬琴以後の作者による京伝・馬琴の追随作における歴史的背景の叙述方法を分析した点である。これは、当初の計画にはなかったが、研究を推進する上で、その必要性を見いだし、新たに追加した方法である。これによって、馬琴読本の作品分析からのみではなく、他の作者との比較を通して、客観的に馬琴の歴史認識と国境意識について分析することが可能になり、本研究において有効な視点であるといえる。これに関して、西日本近世小説研究会(よみほんの会)における二度の発表を行い、また読本研究者との討議を通して新たに知見を深め得たことは、本研究課題における本年度の成果として評価できる。

今後の研究の推進方策

今後の研究は、特に次年度においては、三ヶ月間の研究休暇を有効に活用して、遅れを取り戻し、当初の計画通り推進する。
特にIIIに関しては、本年度の調査結果を踏まえ、さらなる調査かつ分析・考察を終えることを目標とする。その際、馬琴読本にとどまらず、馬琴合巻についても調査を進め、読本との共通点・相違点に留意しながら分析する。さらに本年度より追加した馬琴以後の作家による歴史的背景の叙述方法との比較も継続し、IIIの研究の客観性を保持することを心がける。また本年度は歴史認識を中心に調査を進めたが、特に次年度は国境意識の調査にも力を入れる。馬琴が用いた地誌の一覧をまとめる作業を行い、それらを利用して馬琴がどのようにその土地を描出しているか、馬琴の国境意識を検討する。
I・IIについては、本年度に収集した垂加神道・水戸学をはじめとする思想系の資料に加え、新たに、翻刻のない史料について各所蔵機関での閲覧・調査、必要な資料の複写・収集を推し進めるとともに、これらの資料の読解・分析を行う。「日本魂」などのキーワードを手がかりに、馬琴の言説との比較分析を行い、影響関係を考察する。
二年次には以上のような調査・分析を終え、三年次には二年次のI・II・IIIの成果を俯瞰した上で、本研究課題の総括的な分析を行う。馬琴が同時代のどのような思想に影響を受けたか、また直後に迎える幕末という時代に与え得た影響について考察、成果をまとめ発表することを目標とする。
ただ、七月以降、代表研究者は産休に入るため、産前産後の休暇及び育児休業の取得に伴う本研究の中断届を提出している。計画は中断せざるを得ないが、復帰後には引き続き、本推進方策に沿って研究を遂行する予定である。

次年度の研究費の使用計画

前項「現在までの達成度」に記したように、本年度は代表研究者の体調が思い通りではなく、計画が滞りがちであったこと、また次年度に勤務先における三ヶ月の研究休暇を取得できたことから、次年度における研究の遅滞の回復を期して、当該研究費を繰り越すこととした。
次年度に請求予定の研究費を含め、当該研究費の繰り越し分は、本年度と同様、研究書の購入費、活字化されていない江戸時代の資料の購入費をはじめとして資料の収集に充てる予定である。
特に近郊では、東京大学総合図書館、東京大学史料編纂所、東京大学明治新聞雑誌文庫、国立国会図書館、国文学研究資料館、都立中央図書館、特例財団法人無窮会などでの調査に際し、の複写費、マイクロフィルムの焼付費が必要となる。
その他、遠方の各機関が所蔵する翻刻のない史料に関しては、閲覧・調査のための旅費・宿泊費が必要となる。具体的には、九州大学西岡家蔵読本類、京都大学附属図書館維新特別資料文庫、筑波大学附属図書館昌平坂学問所関係文庫での調査があげられる。
ただ、上述のように、七月以降、代表研究者は産休に入るため、産前産後の休暇及び育児休業の取得に伴う本研究の中断届を提出しており、以上の研究費の使用計画は、研究再開後に主として進めざるを得ないと予想される。

  • 研究成果

    (2件)

すべて その他

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 文政七年刊「弥生佐久羅」

    • 著者名/発表者名
      大屋多詠子
    • 学会等名
      西日本近世小説研究会 2012年度第1回研究会
    • 発表場所
      島根大学
  • [学会発表] 文政十二年刊「檀風物語」

    • 著者名/発表者名
      大屋多詠子
    • 学会等名
      西日本近世小説研究会 2012年度第2回研究会
    • 発表場所
      尾道市立大学

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公開日: 2014-07-24  

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