研究課題/領域番号 |
24720103
|
研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
大屋 多詠子 青山学院大学, 文学部, 准教授 (50451779)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 馬琴 / 武国 / 日本魂 / 近松 |
研究実績の概要 |
二〇一四年度は、育休取得に伴う一年間の中断(二〇一三年七月から二〇一四年六月)を挟み、七月から研究を再開した。三年計画の二年次後半に当たる。 本研究では、Ⅰ「馬琴の治国思想と垂加神道」、Ⅱ「馬琴の尊王思想とその影響」、Ⅲ「馬琴の歴史認識と国境意識」の三側面からのアプローチを試みる。全般としては、データ・資料収集を引き続き進める一方、三本の論文(うち一本は掲載予定)を執筆した。 Ⅰ・Ⅱの側面からは、馬琴の治国思想・尊王思想に関わる、昨年度末の口頭発表の成果を踏まえ、これを「曲亭馬琴の「武国」意識と日本魂」と題して論文化し発表した。馬琴の「日本魂」についての意識に、崎門派の垂加神道の影響の可能性を見出すとともに、「武の国」に着目して、馬琴の治国思想と作品への反映についても考察した。この研究の副産物として、「曲亭馬琴の「小大の弁」」と題して、馬琴の「小大の弁」という言葉に着目し、小説技法の観点から論じたが、馬琴の「小大」の観念は治国思想に敷衍できるとも考えられ、今後の課題を得た。 またⅢの側面では、「馬琴と近松」と題し、近松門左衛門の浄瑠璃利用という切り口から、馬琴の異国意識・国境意識にかかわる論文を準備、執筆した。新年度初頭に雑誌掲載が予定されている。本論文では、馬琴が『椿説弓張月』執筆の際、当時の対外関係の緊張下に、近松門左衛門の異国渡航を扱った浄瑠璃をまとめて読み直した可能性を指摘した。 以上のように三側面からの研究を順調に推進した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一年間の中断を経、本年度は七月以降、九ヶ月間の研究期間ではあったが、三本の論文を執筆できた。時間の制約があるなかで、予定通り三側面からの研究が進められたことからも、遅れを取り戻し、おおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、当初の三年次の予定に従って推進する。 具体的には三側面からの調査・分析を終える。特にⅠⅡの治国思想・尊皇思想の研究においては、本年度の研究を通して得られた手がかりをもとに、引き続き資料の調査・読解を進め、考察を深める。Ⅲについても調査結果をまとめる。その成果を本年度あるいは次年度に発表することを目標とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
申請者は、二〇一三年七月から二〇一四年六月まで、育休に伴う一年間の研究中断を申請しており、当初の三年計画の最終年次の予算執行をそのまま一年繰り越すことになったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
当初の三年次の計画通り、予算執行を進める。 具体的には、昨年に引き続き、研究書、江戸時代の資料の購入費をはじめとして、各所蔵機関の資料の複写費、マイクロフィルムの焼付費が必要となる。 そのほか、遠方の各機関が所蔵する翻刻のない資料に関しては、閲覧・調査のための旅費・宿泊費が必要となる。
|