研究課題/領域番号 |
24720105
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
藤澤 太郎 桜美林大学, 人文学系, 講師 (30406847)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 地方文学 / 山形県の文学 / 東北地方の文学 / 台湾文学 / 関東州・「満洲国」文学 |
研究概要 |
平成24年度は、中央詩歌俳壇有力結社の全国的ネットワーク網を明らかにしていく方向性と、各地域における詩歌俳人の活動とその中央結社との関係性を明らかにしていく方向性の両面から、全般に渡る資料収集と分析を進めた。 中央詩歌俳壇の側からの調査は、詩壇・歌壇・俳壇それぞれについて主要雑誌・結社の系統・消長を整理し、関連文献の収集を進めるとともに、それぞれの同人の地域ごとの分布について部分的に分析を開始している段階である。現時点ではジャンル・系統等を絞らず全般的な資料収集を進めているが、今後収集した資料の粗密や作家論・作品論・地域文学研究と関連した学術的意義を考慮しながら、段階的に成果をまとめていく予定である。 地方詩歌俳壇の調査は、特に「東北地方を中心とした地域的文学の交流」と「植民地文壇に関わる地域的文学交流」に関わる部分を中心に、各地の詩歌俳壇史に関わる資料を広く収集し分析している段階である。現時点でこの部分の調査はやや遅れているが、平成25年度内に各都道府県レベルの主要機関(図書館・文学館等)の調査をおおむね完了させることを目標として調査を進めている。この方面では、各地域における文学活動を全国的な交流網の中で整理してまとめていくことを目指しており、平成24年度は先行して市町村図書館のレベルまで調査を進めている山形県詩壇に関わる成果として『山形・詩と詩人の系譜―鈴木健太郎と『血潮』・『詩脈』』を発表した。同著は山形県上山市の詩人鈴木健太郎の初期の文学活動をまとめたものであるが、鈴木健太郎が関わっていた大正末期の全国的な投書詩人ネットワークについても大きく扱っている。今後は、このような全国的視点からの各地域詩歌俳壇の分析も進め、最終的には中央・地方双方の方向性を重ね合わせた成果へとつなげていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①東京と地方それぞれでの調査・資料収集、②資料の分析、③論文等による成果公刊という研究の流れの中で、平成24年度は①・②を中心的に進め、いくつかの部分で③の段階まで研究がたどり着く予定であったが、特に下記1・2の2点について①・②の資料収集・分析の進捗が遅れたため、当初の予定通り③の成果公刊まで至らなかった部分があった。 1.東京では詩壇・歌壇・俳壇それぞれについて中心的雑誌・結社関係資料を調査したが、基本資料調査の中で新たに発見された関連資料の調査が十分に進まないところがあった。研究成果の公刊のためには関連資料まで含めた網羅的な資料の収集・整理が必要であるため、結果的に研究全体の進捗が遅れる状況となっている。 2.各地域での調査の方は、特に中心的に研究を進めてきた山形県に関わる部分については順調に進み、成果(『山形・詩と詩人の系譜―鈴木健太郎と『血潮』・『詩脈』』)の公刊まで至ったが、それ以外の「東北地方を中心とした地域的文学の交流」と「植民地文壇に関わる地域的文学交流」については収集した資料の整理に時間がかかり、予定していた調査のための出張が後ろ倒しとなっている状況となっている。予算の消化額が予定より少なくなっているのも、この出張が遅れているためである。 どちらの部分についても、平成25年度前半でできる限り遅れを取り戻し、年度内に交付申請書に記載した予定の段階まで研究を進められるようにつとめたいと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の基本的な方向性は、平成24年度と同様、中央詩歌俳壇の有力結社の全国的ネットワーク網を調査していく方向性と、各地域における文学活動とその中央結社との関係性を調査していく方向性の両面から研究を進めていきたいと考えている。 中央詩歌俳壇結社のネットワーク調査という点では、これまで通り全般的な資料収集を継続するが、同時に集まっている資料の粗密に応じて作業の順位付けをしていくことを考えている。現時点の優先順位としては①詩話会成立前後から詩話会解散前後までを中心とした詩壇の整理、②『層雲』・『海紅』を中心とした自由律俳壇の整理、③句誌『ホトトギス』のネットワークの整理、④歌誌『アララギ』のネットワークの整理の4点を特に優先して行って行く予定である。 地方各地域の文学活動の調査については、「東北地方を中心とした地域的文学の交流」と「植民地文壇に関わる地域的文学交流」について特に突っ込んで資料収集を続けながら、全国各地域について可能な限り限り網羅的な調査を続けることになるが、成果をまとめる段階においては特に下記のような点を優先して作業を行っていく予定である。①山形県の詩歌俳壇について、②青森県の「方言詩」の運動について、③東北の『層雲』・『海紅』勢力の動向について、④台湾・関東州・「満洲国」の詩壇活動と中央詩壇との関係について。 地方の文学活動調査については、日本近代文学館・神奈川県近代文学館・国立国会図書館等まで含めても東京の機関では網羅的な資料閲覧ができないため、各地域の県立図書館・市町村立図書館までおもむいて調査を進めるとともに、各地の研究者ネットワークを利用して資料の網羅的な収集につとめたいと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の直接経費については、物品費412,550円、旅費490,000円、人件費・謝金110,000円、その他120,000円の割合での研究費の使用を計画している。 物品費は主に雑誌・書籍等の資料購入に充てるもので、特に大正中期から昭和戦前期にかけての時期に発行された詩歌句誌のうち図書館等に所蔵されていない閲覧困難な資料購入費への充当を考えている。平成24年度から繰り越された研究費のうちおよそ1/3はこの部分で使用する予定のものであり、上記の金額に含まれている。 旅費は地方・海外の図書館の資料調査のために使用する。平成25年度は国内出張7回、海外出張1回を予定している。国内出張は研究の重点を置いている北海道・東北・北陸地方の調査に3回分使用する他、調査が遅れている中国・四国・九州地方の調査に2回分、関東近県の調査に2回分使用する予定である。海外調査は台湾台北での調査を予定している。平成24年度から繰り越された研究費のうちおよそ2/3は国内出張が後ろ倒しになってものであり、この部分の金額に含まれている。 人件費・謝金としては、主に収集した資料の整理と成果物作成の際のデータ入力のための人件費としての充当を考えているが、研究会を通じて研究者から情報・資料提供を受ける際の謝金としても一部充当する予定である。 その他の金額は、資料を複写する際の経費、資料・成果物を印刷する際の印刷費として充当する。
|