研究課題/領域番号 |
24720105
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研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
藤澤 太郎 桜美林大学, 人文学系, 准教授 (30406847)
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キーワード | 地方文学 / 山形県の文学 / 東北地方の文学 / 台湾文学 / 関東州・「満洲国」文学 |
研究概要 |
平成25年度も前年度に引き続き地方詩歌俳壇と中央詩歌俳壇の双方の方向から調査を並行して進めた。 地方詩歌俳壇調査の方は、近畿・北陸・山陰・九州の一部の県を除く各都道府県で予定していた基礎的調査を終えた段階で、調査を実施した地域においては、県立レベルの機関(図書館・文学館等)での関係資料所蔵状況の把握と優先的に必要な基本資料の収集をおおよそ完了している。また、中心的に研究を進めている山形県については、県立図書館の調査に加えて市町村立レベルの機関での調査と関係者への調査も同時に進めており、資料の所在状況をより詳細なレベルで確認し終えるとともに、相当程度の網羅性をもった質量で資料収集を進めることができている。 中央詩歌俳壇の調査は、平成25年度においてはこのような地方での調査の進捗に合わせる形で行い、それぞれの地域で収集した資料と前年度から整理を続けている有力結社のネットワーク網に関わる資料とを対照させる形でまとめているところである。 このような調査をふまえた成果の公表は遅れており、平成25年度に発表できたのは「『新年』と草野心平―詩誌『太平洋詩人』から見たその結びつき」『詩誌「新年」への想い』(市島三千雄を語り継ぐ会)と書評「橋本恭子著『『華麗島文学志』とその時代―比較文学者島田謹二の台湾体験』」『日本台湾学会報』第15号(日本台湾学会)程度であった。ただし、東北地方に関わるテーマと植民地に関わるテーマを中心に資料整理は進んでおり、部分的にはほぼ発表できる段階まできている論考もある。特に準備が進んでいるのは(1)前年度公刊した詩人鈴木健太郎論に続く山形県詩壇に関わる部分と俳誌『海紅』・『層雲』の地域ネットワークに関わる部分で、これらは順次公刊していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)東京と地方それぞれでの調査と資料収集、(2)資料の整理分析、(3)論文等による成果の公刊という研究の流れの中で進捗状況を考えると、平成25年度は(1)・(2)の資料収集・整理分析については前年度に比べて大幅に進んだものの、扱うテーマが多岐にわたることから(3)の段階までたどり着いた部分は少なく、全体として研究が遅れているといわざるを得ない状況にある。前年度からの主な変化は下記の二点である。 1.前年度から最も進んだのは各地域の詩歌俳壇調査であり、近畿・北陸・山陰・九州の一部の県を除いて除いて必要な調査を終えることができた。結果として、平成26年度の継続した調査によって全都道府県レベルで最低限の調査を完了する見込みがついたといえる。 2.関東圏での調査、調査をふまえた公刊準備という点でも、前年度の推進方策に従って焦点を絞ったことによりある程度の目処をつけることはできている。 今後は多岐にわたるテーマの中でより扱う内容の焦点を絞ることで、成果の発表へとつなげていくことが課題になるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進捗状況は必ずしも十分に芳しいものとはなっていないが、前年度に提示した推進方策は一定程度の成果を上げていることから、平成26年度も方向性としては同様の方策を考えている。 平成26年度特に焦点を絞るのは調査が進んでいる下記の3テーマである。 1.東北地方の詩歌俳壇と中央詩歌俳壇・各地域詩歌俳壇とのネットワークについて。具体的には(1)山形県の詩人・歌人を中心として広がるネットワーク、(2)昭和10年代青森の『東北文学』・方言詩等に関わるネットワーク、(3)石巻と「二行詩」に関わるネットワークなどが調査が進んでいる部分である。 2.自由律俳誌『海紅』・『層雲』等に関わるネットワークについて。具体的には(1)山口県周南地域を中心としたネットワーク、(2)兼崎地橙孫に関わるネットワークなどが調査が進んでいる部分である。 3.台湾・関東州・「満洲国」等植民地詩歌俳壇に関わるネットワークについて。具体的には(1)台湾花蓮と九州俳壇に関わるネットワーク、(2)関東州・「満洲国」と各地域詩壇との間のネットワークなどが調査が進んでいる部分である。 当面は各地域詩歌俳壇調査を主、中央詩歌俳壇調査を従とし、図書館・文学館等での資料収集、関係者からの聞き取りと成果公刊の準備を並行して進めていく予定である。
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