研究課題
平成25年度(研究第2年目)は、アナキズム文芸雑誌の目録情報の収集とそのデータ化を継続しておこなった。昨年度にデータ化を終えた雑誌『エクリバン』の目録情報については、これまで全く公開されていなかったため、紙媒体およびオンライン版の雑誌『フェンスレス』(創刊号)で先行的に公開をおこなった。当初は本年度内にデータベースの一部公開を目標としていたが、データのチェックに時間を要しており次年度にずれこむ見通しである。個別の事例研究としては、7月に「萩原恭次郎とセルゲイ・エセーニン」(日本比較文学会北海道大会)、また同月に「アナキズム詩の地方ネットワーク」(北海道教育大学語学文学会)の2つの研究報告を行った。これらを通して明らかになったことは、アナキズム詩人たちの活動が海外の文学動向とも相関性を持ち、他方では、日本の地方農村ともつながっていたことである。こうした活動は、組織的に指導されたものというよりも、個人の自由な活動が相互に連合していくものであった。思想的な対立を抱えつつも、必要に応じて連携/協力するスタイルが機能していたのである。これらの他、昨年度に行ったアナキズム文学関係の口頭発表2本「残余としての「相互扶助」 ―蟻塚ユートピアの向こうへ―」(『有島武郎研究』16号)、「『近代思想』のドラマ批評 ―「新しい女」をめぐって―」(『大杉栄と仲間たち 『近代思想』創刊100年』ぱる出版)を論文として発表した。
3: やや遅れている
当初は平成25年度以内のデータ公開開始を目標としていたが、現在の所、データ化を行った雑誌50タイトル分の確認校正作業に時間を要している。また、当初はWeb上での検索システムの稼働は予定していなかったが、より有効・有益な情報公開のあり方を再検討しており平成26年度上半期中にはその結論を出すこととしている。データの入力及び校正作業については、研究協力者の確保も含めて問題はない。情報の正確を期すために作業速度の大幅な向上は難しいが、可能な限り効率化を図ることで遅れを取り戻すよう努める。雑誌調査もふまえた個別事例研究は順調に行っている。
入力済みの雑誌目録情報のチェックを完了し、早急に第一弾の情報公開を行う。そのために、オンライン上での検索システムの稼働も視野に入れた公開方法の確定を平成26年度上半期中に行う。今後、当初計画の雑誌100タイトルを目標として、追加の目録情報入力を進める。平成27年度までにその全体を公開し計画を達成することを目標として作業を進める。また事例研究では、戦時下のアナキズム詩人たちの動向について詳細に検討すると共に、戦後のアナキズム系雑誌やアナキズム的な傾向をもつ雑誌についての調査を進めるつもりである。とりわけ、戦後の雑誌『サロン』については集中的な検討を行いたいと考えている。
データベース化作業が遅延し、作業アルバイト謝金が発生しなかった為。データベース化作業を滞りなく進捗させ、その作業アルバイト謝金として使用する。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) 図書 (1件) 備考 (1件)
フェンスレス
巻: 1 ページ: pp.37-51
有島武郎研究
巻: 16 ページ: pp.14-28
http://senryokaitakuki.com