研究課題/領域番号 |
24720115
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 豊田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
加藤 弓枝 豊田工業高等専門学校, 一般学科, 准教授 (10413783)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 小沢蘆庵 / 藤島宗順 / 妙法院宮 / 非蔵人 / 蘆庵文庫 |
研究概要 |
近世期の特徴に、封建制度によって身分が階層化され、異なる階層の人々――特に公家と庶民等―は、容易に交流を持つことが許されなかったことが挙げられる。しかし、近世中期から徐々に階層間の学術交流が目立つようになり、その交流を基盤として新たな魅力あふれる作品が生み出されるにいたった。この階層間の交流を取り持ったのが、身分的境界領域の人々、具体的には非蔵人(ひくろうど)・門跡関係者・坊官等であった。千年以上に及ぶ日本文学の歴史の中で、当然ながら近世期については、文献資料が大量に残されており、「身分的境界領域の人々による越境的学術ネットワーク」の実態を探るために適した資料も多く現存する。しかしながら、それら資料群は、あまりに膨大で未解明・未発見の部分も大きい。この膨大に残る現存資料群を何とか活用し、越境的学術ネットワークの実態を具体的に明らかにすることが、本研究の大きな目的である。このことは、近世文学史のみならず、近世文化史的に見て意義がある。 当該年度においては、身分的境界領域層の中でも非蔵人に注目し、特に藤島宗順と妙法院宮との関連について研究を進めた。藤島宗順とは、禁裏に非蔵人(ひくろうど)として出入りしていた新日吉神宮の祠官である。光格天皇へ本居宣長の古事記伝を取り次いだ人物としても知られるが、妙法院宮との関係が深い人物でもあった。近世後期の京都において妙法院宮(とくに真仁法親王)の文化的に果たした役割は大きく、独自の文化サロンを形成していたことは周知のごとくである。その妙法院宮と藤島宗順を中心とする非蔵人との関連について研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的はおおむね順調に進展している。まずは、本研究を進める上で必要となる、基礎的資料の集成と整理を当該年度には行った。また、関連する書誌データを得るために、京都の洛東にある新日吉神宮の蘆庵文庫で調査を行った。同文庫には、歴代宮司たちの多くが非蔵人であったことから、その職掌に関する資料が膨大に所蔵されいる。そこで、それらの資料のうち、歴代非蔵人日記、とくに近世中後期の京都文壇で活躍した藤島宗順等の日記の撮影を終え、解読を進めている。また、同文庫に所蔵されている非蔵人の名簿の翻刻作業へ取り組んだ。
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今後の研究の推進方策 |
今後は蘆庵文庫や国会図書館、国文学研究資料館での調査をより進め、そこで得られた資料によって、非蔵人の実態について考察をすすめる。当該年度の調査の結果、想像以上に同文庫に収められている非蔵人関連資料が大量に所蔵されていた。とくに近世後期の禁裏に関連した人々の人名録が収められていることが判明したため、それらの資料の読解を進め、身分的境界領域の人々の人名データベースの基礎を構築する。作業が予定以上に進めば、仮データベースをweb上で試験公開したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度の調査によって、次年度に撮影機材費用が予定以上にかかることが判明した。そのため当該年度の予算の一部を次年度に使用することにした。
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