本研究の成果は、近世中後期に活躍した非蔵人と地下官人出身の書肆(吉田四郎右衛門)に注目をし、その基礎的資料を整理すると同時に、彼らによる学芸営為の現場や出版活動の実態を解明した点にある。その結果、公家とも地下とも異なる彼ら独特の学芸営為の意義や、学術組織の実態を解明することができた。その過程で、身分的境界領域の人々が、すでに近世前期から京都雅文壇において重要な役割を果たしていた様相がうかがえ、各時代によってその役割の内容に大きな変化が生じていることも明らかとなった。さらに、地下官人の学芸活動に関する膨大な資料を新たに発見することができた。
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