研究課題/領域番号 |
24720121
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
霜鳥 慶邦 福島大学, 人間発達文化学類, 准教授 (10400582)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 第一次世界大戦 / 記憶 / イギリス文学 |
研究概要 |
まず、「最後のトミー」として、そして「第一次世界大戦世代」の象徴的存在として有名なHarry Patch(2009年死去)の文化的重要性に関する論文を完成させ、投稿し、『英文学研究支部統合号』Vol.V(2013年1月)に掲載された。この論文は、従来ほとんど学術的に論じられてこなかったHarry Patchを考察対象とし、この人物の記憶の分析を通して現代イギリスにおける大戦の記憶の全体的特徴を明らかにした点で、意義のある論考であると考えている。 8~9月に、イギリスにて現地調査を行い、イギリス各地(ロンドン、エディンバラ、リヴァプール、マンチェスター、ポーツマス、カーディフ、ウェルズなど)の博物館や記念碑を巡り、写真に記録すると同時に、第一次世界大戦に関する資料を入手した。 9月以降は、「第一次世界大戦世代」不在の時代へと移行した現代イギリスにおける大戦の記憶の行方に関する論文の執筆に取り組んだ。夏の現地調査で獲得した資料も大いに活用できた。本論は、第一次世界大戦体験者が不在となった現代イギリスにおいて、大戦の記憶にどのような継続性・変化・歪曲・忘却が生じたかを明らかにしようとするものであり、現代のイギリスの状況にまで議論が追いついていない先行研究を大幅にアップデートさせる点に意義がある。本論を3月末に完成させ、学術雑誌に投稿した。 また、主にインターネットを活用して、第一次世界大戦100周年へと向かう各国の文化的動向を常にチェックし、最新の情報を収集・整理・分析した。 全体的に、論文を2本完成させ(うち1本は掲載済み)、現地調査で豊富な資料を獲得し、次年度の研究へのスムーズな継続・発展のための情報基盤の構築も順調に進み、意義ある研究成果であると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究実施計画であった、①Harry Patchに関する論文執筆、②現地調査による資料収集、③「第一次世界大戦世代」不在の時代へと移行した現代イギリスの研究、のすべてを予定通り遂行できたため、研究は全体的におおむね順調に進展したと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究の過程で浮上してきた次の二つの課題が、今後の最重要課題となる。一つは、現代イギリスの第一次世界大戦の記憶における戦争詩人Wilfred Owenの影響力について。もう一つは、第一次世界大戦の記憶とイラク戦争・アフガニスタン戦争表象との相互影響関係について。この二つの課題について、資料・文献の整理・分析、現地調査、研究者間のネットワークを最大限に活用しながら取り組んでいく。さらに、第一次世界大戦勃発100周年を迎えることになる各国の動向の情報収集について、今まで以上に力を注いでいく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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