研究課題/領域番号 |
24720126
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
井上 間従文 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 准教授 (50511630)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | トランスパシフィック (アメリカ、アジア) / 映画・映像研究 / 美学理論・感性論 |
研究概要 |
平成24年度は1980年代以降現在までにおいてアメリカで発表された文学と映像作品と、ヴェトナム戦争、戦後朝鮮半島の政治的状況との密接な関わりあいについての基礎的調査を行った。 まずは韓国系アメリカ人というその出自に関わらず、1990年代以降の前衛的かつ政治的な表現の世界において再評価を受け、また後続世代作家たちの大きな影響を与えることとなったテレサ・ハッキョン・チャの韓国と日本滞在時の記録について調査を行った。チャが民主化運動・学生運動の盛んであった同時期の韓国で目撃した事の重要性と、チャが同時期のフランス映画理論のアメリカにおいての紹介者でもあったこととの関連性についてまとめた論文を発表予定である。同時に、チャの業績を比較的早い時期から紹介していたミョンミ・キムという詩人と、キムがその紹介を行った媒体である雑誌How(ever)についての資料収集を行った。How(ever)という雑誌の重要性をより正確にとらえるために、その創始者でもある詩人Katherine Fraserについての資料収集も行った。 また平成24年度はViet Thanh Nguyen南カリフォルニア大学准教授を招へいし、同氏が現在推進するトランスパシフィック・スタディーズにおいて、これまで類似したフレームにおいて見逃されてきた「東南アジア」をいかに捉え直し、それを踏まえたうえで主権権力と生権力が巧妙に連動しながら進展する新自由主義下の統治性と、こうした「トランスパシフィック」文化研究との連接が可能かについての討議および講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は3か年の研究計画の初年度であるため、同課題を今後推進し成果を発表するための基礎的調査および文献収集を行った。この点に関しては、研究対象となる作家達および作家達が媒体としていた雑誌等に関する重要な一次資料を得ることが出来た。また研究実績の概要でも記したように、同研究を今後進めるために必要と思われる米国在住の研究協力者との研究会、講演会なども進めることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に関してはテレサ・ハッキョン・チャに関する論文を英語圏の学術誌で発表し、さらには1960年代のアメリカと沖縄をめぐる「脱主体化」というテーマのもとにアメリカの詩人と沖縄の詩人の主題的および方法的共鳴関係について考察する論文の執筆を予定している。 また理論面においては、20世紀後期に顕著な現象となった新自由主義の進展を、ポストコロニアル研究のこれまでの成果と結びつけて考える作業が急務であると考える。この面での研究を進めるために、月例での研究会の開催を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は当初予定していたアメリカでの資料調査および研究協力者との面談が先方の都合等の予期せぬ諸事情のために実施困難となってしまったため未使用額が生じたが、平成25年度にこれらを実施する予定でいる。
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