研究実績の概要 |
本研究課題の最終年度にあたる平成27年度は、これまでの研究成果の総括を中心に行った。6月の中・四国アメリカ文学会年次大会で行った研究発表「伝記作家の声:Jared Sparksの歴史記述における史的客観性と脚注的想像力」では、19世紀初頭の歴史家Jared Sparksによる_The Life and Writings of George Washington_とその編集指針をめぐる論争を題材に、当時の実証主義的な歴史記述が抱えていた問題、すなわち史的客観性と文学的想像力の葛藤の問題を検証した。11月には本研究課題の姉妹企画として平成27年度より開始された「注釈・翻訳研究会」(周縁テクスト(注釈・翻訳)の自立性をめぐる歴史的・理論的研究(基盤研究C)による研究会)において、本研究課題の総括報告を行った。報告は、研究会に招聘した流通経済大学の三添篤郎氏による講演「注釈と原爆:アメリカ国立公文書館をめぐって」に対するレスポンスとして、「燃やされた手紙:文書の保存をめぐる考察」と題して行った。また、_The International Journal of Books, Publishing and Libraries_ 14において近日中に出版される論文 "'Collect, Preserve and Communicate': Jeremy Belknap's Republic of Letters and the Problems of Early American History Writing" では、本研究課題のスピンオフとして、史料の管理や整頓の仕方に関わる問題を18世紀末アメリカの歴史記述の事例から論じ、同じ問題が現在の電子化時代の史料管理にもあてはまることを指摘した。 上述した研究以外には、9月の日本アメリカ文学会東北支部で行ったJames Baldwin論、10月の日本アメリカ文学会全国大会で発表したFrancis Parkman論、さらにParkman論の仕上げとして2016年3月のInterdisciplinary Nineteenth Century Studies Conference (Asheville, North Carolina, USA)において "Geological Deep Time in Francis Parkman’s History Writing" と題する研究発表を行った。
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