注釈は学問の正統性を保証する技術的装置であると同時に、代替的な表現の場でもある。19世紀初頭アメリカの歴史記述において、注釈は史的客観性を担保するだけでなく、創造的な可能性を有する実践だった。また、注釈は近代における小説ジャンルの発展にも影響を与えていた。それは科学的客観性と文学的想像力とが交差し、新しいスタイルのテクストを生み出す空間だった。 文学研究の方法として、創造的な注釈の実践は既存の解釈や作家像にかわる新しい視座を導入するうえで大きな可能性を有している。また、文学教育においても本文テクストを多くの観点から解釈し、補足し、その成果を一つにまとめる方法として注釈は有効である。
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