ヴィクトリア朝期のイギリスで大流行した「活人画」という珍しい娯楽について、1.歴史的な事実、2.文学作品における表象、という二つの点から研究調査を行った。その結果、初めは上流階級の私的な娯楽であった活人画が徐々に大衆の人気を博していった様子や、19世紀末にかけて活人画が芸術か否か、という結論を見ない論争が巻き起こっていたことが明らかになった。その過程には、技術の進歩によって視覚体験が劇的に変化した時代に、人々が芸術に対し抱いた欲求や郷愁、戸惑い等の複雑な意識を読み取ることができる。文学作品における活人画の描かれ方も、こうした歴史的な状況を反映したものになっている。
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