研究課題/領域番号 |
24720134
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
乙黒 麻記子 日本大学, 理工学部, 助教 (60551249)
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キーワード | 南太平洋の英語文学 / Somerset Maugham / 「雨」 / 娼婦 / サモア |
研究概要 |
本研究は南太平洋島嶼部を舞台とする英語文学を、その歴史的背景を踏まえながら包括的に考察することを目的としている。数ある作家・作品の中でも特に着目するのは、Robert Louis StevensonやSomerset Maughamなど19世紀から20世紀のイギリス人作家たち、また現代サモア人作家Albert WendtやSia Figielなどである。当初申請した研究期間は平成24年度から26年度である。 さて、私事ではあるが、平成25年12月9日に第一子を出産した。それに伴う産前産後の休暇と平成26年3月末日までの育児休暇期間中の約半年間は、実質的に本研究を中断することとななった。また、産休に入る前も体調が思わしくなかったために、残念ながら研究は予定から大幅に遅れてしまっている。 こうした中での具体的な研究実績は、平成25年5月25日と26日に東北大学で行われた日本英文学会での口頭発表のみである(タイトル:「Somerset Maughamの「移動」する女たち」)。ここではサモアを主な舞台とするMaughamの代表的な中編小説「雨」を、汽船の定期運航便という当時としては新しい移動手段に着目しながら、本作品が従来の男性主人公が活躍する南海の海洋冒険小説のステレオタイプから大きく逸脱していると指摘したうえで、当時の南太平洋情勢やアメリカ合衆国の娼婦をめぐる政治的状況、また女性宣教師や移住者の妻など、「雨」には従来ほとんど着目されてこなかった南太平洋島嶼部に生きた白人女性たちが描かれていると論じた。 もともとの予定では、25年度の後半は24年12月に行った口頭発表や、上記の25年5月の発表を論文として完成させる予定であったが、上述の産休・育休のために完成していない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成25年12月9日の出産に伴う産前産後の休暇、および26年3月末日までの育児休暇取得のために研究が中断し、研究計画に大幅な遅れが生じることとなった。また、産休以前の長期にわたる体調不良もその遅れの一因となっている。 具体的には、25年度に予定していた論文2本の執筆(24年12月と25年5月に行った口頭発表をまとめたもの)が進んでいない。また、26年度以降行われる学会にも応募することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
産休・育休期間の研究中断に伴い、前年度は研究計画が大幅に遅れが生じており、さらには予定していた資料収集のための海外出張も行うことができなかったため、前年度予算の大部分は未消化となってしまっている。海外出張を行うためには通常業務のスケジュールとの兼ね合いが必要であることや、自身の体調や家庭の状況なども鑑みて、研究期間の一年延長を申請することを考えている。 さしあたって、26年度の計画としては、昨年度までに行った本研究課題に関する口頭発表2つ(平成24年12月に日本英文学会関西支部で行った口頭発表と、25年5月に日本英文学会で行った口頭発表)を論文として完成させることを目指す。また、これまで収集した資料や読み込んだ作品を分析し、できれば今年度中、もしくは来年度の前半までに行われる学会への投稿を試みたい。そして、年度末の3月ごろにハワイ大学などに資料収集のための海外出張を行いたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた原因は、出産に伴う産前産後の休暇、および育児休暇の取得により研究遂行に支障が生じたためである。具体的には、25年度に予定していた資料収集のための海外出張を見合わせた結果、それに充てる予定であった予算を繰り越すこととなったことによる。 そもそも、本研究課題の予算申請は、年度あたり7万円程度の図書を中心とする物品費用を除けば、残りの大部分は海外への渡航費として計上していた。25年度、26年度ともに資料収集や研究発表のための海外出張をそれぞれ一回ずつ予定していたが、現在までの研究の進捗状況や通常業務との兼ね合い、また自身の体調などを考えて、研究期間を一年延長することを考えている。その場合、まず今年度は来年の3月頃に資料収集のための海外出張を行うことで40万円程度の予算使用を見込んでいる。また延長した次年度に再度、資料収集や研究発表のための海外出張を考えている。資料収集のための出張先としては、豊富な資料を持つイギリス(大英図書館やロンドン大学など)や、ハワイ大学、オーストラリア国立大学などを検討している。
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