研究実績の概要 |
本研究は、南北戦争以降、アメリカの詩が「アメリカ詩」として認識され確立される過程を、環大西洋空間および環太平洋空間から捉え直す試みである。ニューヨーク州立大学のクリスチャン・ミラー教授より南北戦争詩研究および詩のジャンル研究について助言を得ながら、トロント大学にて開催されたカンファレンスで"Civil War Monuments Created by Ephemeral Media"というタイトルで発表を行った。英米の雑誌メディアを通じて南北戦争の全体像がいかに形成されたか問題提起を行うことができた。 南北戦争とその歴史観の環大西洋的な形成を土台として、本研究はさらに戦後から世紀転換期にいたる批評空間の再構成を目指した。結果、当時のアメリカ批評がイギリスとの対抗意識からナショナル・セレブリティと「アメリカ文学」の創設を必要としていたことを解明できた。具体例として、従来1920年代に開始されたと考えられてきたメルヴィル・リバイバルの開始を世紀転換期のアメリカニズムに遡ることが可能になった。2014年7月、ポーツマス大学主催のカンファレンスにて"Harnessing National Celebrity: Melville Revival, Transatlantic Animosity, and the Construction of National Literature"という発表を行い、世紀転換期の環大西洋批評空間の射程を論じた。2014年8月、翌年6月開催のメルヴィル学会第10回国際大会のポロポーザルを提出し受理された。2014年12月、日本メルヴィル学会会報Sky-Hawkに"The Transatlantic Melville Revival and the Construction of the American Past"が掲載された。
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