研究課題/領域番号 |
24720137
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
三原 芳秋 同志社大学, グローバル地域文化学部, 准教授 (10323560)
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キーワード | 文学理論 / 生態学的転回 / 思想史 / 新批評 / 英米文学・哲学 / 生の哲学 / モダニズム / 理論化への意志 |
研究概要 |
本年度の研究実績は、(予定よりやや遅れ気味とはいえ)当初の計画通りに実施されたアーカイヴ調査と、研究を進めていくなかで見出された全く新たな方向性を開拓するための準備段階の研究との、ふたつに大別できるであろう。以下、それぞれについて、簡略に記す。 夏季休暇を利用し、昨年度諸般の事情により実施できなかった、ハーヴァード大学ホートン図書館におけるアーカイヴ調査を行った。今回集中的に調査したのは、T.S.エリオットのベルクソン関連資料(コレージュ・ド・フランスでの聴講ノートや未公開のベルクソン論原稿など)である。これにより、ベルクソン哲学と英米文学理論との間のミッシング・リンクを探る試み、ひいては「新批評」を同時代の西洋思想史のなかに位置づける試みは、その端緒についた。 他方、「文学と理論」すなわち「『文学的なるもの』を理論化する」という「新批評」のうちに先駆的に見出される「理論化への意志」をいかに評価すべきか、という問いを探究していった結果、「生態学的文学理論の可能性」という全く新たな問題系に到達するに至った。これは、「テクストに外部がない」として通常批判の対象となる性格を、かえって「テクストを環世界とする生態学的アプローチ」として肯定的に捉えなおす、という発想の転換を伴うものである。この新領野を積極的に開拓すべく、同様の問題意識を持つ異分野の若手研究者たち(人類学、哲学、認知言語学、コミュニケーション科学)を集め、国際日本文化研究センターの場を借りて、「人文学の生態学的転回(エコロジカル・ターン)のために」と題するシンポジウムを企画した。また、表象文化論学会(於・東京大学駒場キャンパス)主催の企画パネル「ポール・ド・マン没後30年 ―― 記憶、機械、翻訳」に招聘された際にも、同様の問題意識から、ポール・ド・マンの文学理論を「生態学的アプローチ」から読み直すという試みを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の遅れを完全に取り戻すまでには至っていないが、修正した計画に沿ったアーカイヴ調査を順調に行うことができたのに加え、当初予期していなかった研究の新たな展開が期待されることとなった。また、後者の関連で、当初計画とは少々性質の違うものとなったとはいえ、異分野の若手研究者たちとのネットワークが構築された。以上により、研究はおおむね順調に進展していると評価されうると考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画の遅れを取り戻すべく研究計画を着実に実行に移すとともに、それにこだわり過ぎず、新たに見出された研究の方向を積極的に開拓し、それらが有機的に結びつく地点を模索していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度実施できなかったハーバード大学ホートン図書館への調査旅行を昨年度よりの繰越金でまかなうことができ、それ以上の調査旅行を実施する時間的余裕がなかったために、ふたたび繰り越すこととなった。 当初計画では2年目に実施する予定だった英国へのアーカイヴ調査旅行を実施する。 また、今年度は、新たな方向性を開拓するために、積極的に内外の研究者と交流することに予算をさく必要が生じることが見込まれる。
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