研究課題/領域番号 |
24720142
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 広島経済大学 |
研究代表者 |
麻畠 徳子 広島経済大学, 経済学部, 助教 (40595831)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 作家協会 / ウォルター・べサント / 三巻本小説 / イギリス出版史 |
研究概要 |
本研究は、1884年イギリス「作家協会」の成立という歴史的事実を考察の中心に据え、協会機関誌 "The Author" に掲載された主要なイギリス作家の記事を収集し、その活動をとりまく当時の文学的状況を包括的に考察して、その文化的意義を検討しようとするものである。 初年度は、2012年9月に約一週間渡英して、大英図書館所蔵の「作家協会」機関誌 "The Author" を閲覧、収集することができた。今回の渡英では、協会設立当初の創刊号である1890年5月号から、協会設立者のウォルター・べサントが没する1901年7月号までを収集対象として、印刷可能なものはコピー複写あるいはPDFファイル保存した。帰国後に収集した資料を参照していく過程で、協会の活動内容に様々な形で関与する文壇の作家たちの姿が見えてきた。 また、今回の渡英において一番の収穫だったことは、創刊号以降すべての機関誌が大英図書館に所蔵されているとの協会HP情報を信じて閲覧希望を出したところ、実は第一次大戦により初期の機関誌の一部が焼失しているという事実が発覚したことである。具体的には、1892年から1897年までの刊行物がすでに失われているということが分かった。 現在まで続く作家協会の活動については、学術的関心が寄せられた前例がほぼないといっていいが、今回の資料収集活動をつうじてこうした現状の把握ができ、またその情報の損失を補う二次的資料の調査が早急に求められると判明したため、研究の新たな目的を掲げる必要があると感じている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、初年度夏期9月の渡英に加えて、冬期2月の資料収集出張を想定していた。特に一度目の渡英において、一次資料が一部焼失しているという事実が発覚したため、二度目の渡英においては、現協会関係者と直接会って話を伺うことや、同時期の文芸雑誌記事を閲覧収集することが求められると考えていた。しかし、日程の都合がつかず、初年度には二度目の渡英は達成できなかった。だが一方で、一次資料の参照のみで事足りると考えていた研究計画を早急に修正し、補足する二次資料の検討に着手し始めることができたので、次年度では二度目の資料収集出張を目標にして、さらに関連する資料の収集と考察に邁進したい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、次年度は、初年度に収集できた「作家協会」機関誌の複写資料をもとに、当時の文学的状況における作家たちが共有していた問題意識や個々の議論の方向性などを考察し、その成果をまとめていくことを目標とする。具体的には、「日本ヴィクトリア朝文化研究学会」の学会誌へ論文投稿することや大会研究発表することなどをつうじて、考察を深めていきたい。また同時に、一次資料と二次資料の検討も推し進めて、初年度に達成できなかった渡英による資料収集で得られる新たな情報から、さらなる考察の裏づけを図る予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画として、大きくは二度目の大英図書館への資料収集に関わる旅費と、国内で入手可能な文献資料の購入費が見込まれる。また初年度の研究をつうじて、設立当初の「作家協会」の活動には、協会発起人ウォルター・べサントの人間性や創作理念などが大きな影響力を持っていたことが分かってきたので、べサントの文学者としての側面と活動理念をより掘り下げるためにも、初年度には入手するつもりのなかった作家べサントの作品関連の文献にも、本研究費の多くを使用する予定である。
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