研究課題/領域番号 |
24720142
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研究機関 | 広島経済大学 |
研究代表者 |
麻畠 徳子 広島経済大学, 経済学部, 助教 (40595831)
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キーワード | 作家協会 / 著作人格権 / イギリス出版史 / ジョージ・ギッシング / ウォルター・べサント / 三巻本小説 |
研究概要 |
本研究は、1884年のイギリス「作家協会」設立という歴史的事実をふまえて、その出来事自体が当時の文学的状況においてどういう意義を持っていたのかを、考察しようとするものである。 初年度にあたる平成24年度においては、協会設立当初の1890年5月から現在に至るまで発行されている機関誌『The Author』の存在に注目し、その誌上でどのような議論が展開されているかをたどった。具体的には、創刊号から協会設立発起人のウォルター・べサントが没する1901年7月号までを、大英図書館へ赴いて収集し、そこでの掲載記事を確認、検討した。そして、協会創設期における様々な立場からの多様な活動方針のありかたを考察した。その成果の一部は、『広島経済大学研究論集』第35巻4号にまとめられた。 次年度にあたる平成25年度においては、前年度に考察した「作家協会」誌上の議論をふまえて、それが当時の著名な小説家たちにとっての「小説の未来」を懸念する議論と、どう関連付けられうるのかを検討した。なかでも、1890年代に雑誌連載小説家として活躍したジョージ・ギッシングに注目し、当時の出版業界の執筆現場の裏側を描いた『三文文士』という作品においては、小説家が著作人格権を保ちながらいかに執筆活動を続けられるかを模索する過程をおっていると考察した。その成果の一部は、共著『移動する英米文学』にまとめられた。 ただし平成25年度においては、年度途中の6月13日から翌年3月31日までの期間、研究者が産前産後休暇および育児休暇を取得したため、当該年度の一定期間を研究中断することとなった。そのため、研究期間を当初の平成24年から25年までではなく、26年まで一年間延長することによって、中断期間の研究の遅延を補えるよう、研究計画の修正を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究が「やや遅れている」と区分される理由は、平成25年度途中の6月13日より翌年3月31日までの期間、研究者が産前産後休暇および育児休暇を申請取得したため、当初の研究計画を一時中断したことによる。この中断期間の遅延を補う目的により、当該研究期間を一年間延長することとした。 出産および育児のため、渡英しての大英図書館での資料収集や「日本ヴィクトリア朝文化研究学会」への参加はできなかったが、当初予定されていたそれらの研究計画の実行は、延長した平成26年度において行うことができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方針は、これまでの資料収集や研究考察をふまえて、それらを成果発表できるかたちにしていくことである。具体的には、「日本ヴィクトリア朝文化研究学会」における学会発表や論文投稿、またその他、発表できる場においての成果報告を目標としていきたい。そのためには、考察の裏付けとなる一次資料の収集や二次資料の確認を徹底する必要がある。そこで、大英図書館へ赴いての資料収集や、関連する文献書籍の参照を推し進めつつ、今後は自分の考察との比較検討を行っていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
産前産後の休暇および育児休業の取得(平成25年6月13日~26年3月31日)に伴う補助期間延長を申請したため、平成25年度は研究費の使用がなかった。 平成25年度6月末以降に中断していた研究を再開するにあたり、当初使用する予定であった資料収集のための渡英にかかる旅費、学会参加のための旅費、文献書籍購入のための雑費等に当てる予定である。
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