①平成26年度前半はフィールドワーク、後半は研究成果のとりまとめに力をいれた。エスニシティの観点を取り入れ、カザフスタン・ウズベキスタンで戦争記憶の調査を行った。当時疎開や強制移住先であった中央アジアにおける第二次大戦の記憶のあり方がヨーロッパ・ロシア地域とはかなり異なること、そして旧ソ連崩壊以降の独自の発展を見せていることが判明した。また戦争記憶の比較として、台湾調査、学会発表で訪問の機会を得たアメリカのアラモ砦と韓国ソウルの朝鮮戦争と植民地時代の記憶の調査を行った。幅広い知見を養うことで、旧ソ連やロシアの特徴を把握できた。国内では北海道大学スラブ研究センターにおいて文献調査・収集した。ソ連時代の新聞における戦勝の顕彰についての調査とスラブ地域の戦争記憶に関する英語圏の先行研究を調査・収集した。 ②研究内容としては、戦争記念碑と文芸作品に相関関係が見いだされた。記憶研究の視座から見直すことで、後期ソヴィエトの文学・文化状況の新しい側面が見えてきた。 ③口頭発表については、国際学会での英語発表が2本(うち1本はパネル組織も担当)、国内1本、カザフスタンの国際文学フェアにて招待講演を行った。この際、ロシア本国や海外のロシア研究者との学術交流を深め、カザフスタンの現地ロシア語作家からは現地文学状況について貴重な情報を得た。論文発表については、女性兵士と戦争記憶を扱ったロシア語論文が平成27年6月に刊行予定である。その他、査読誌に投稿し、商業誌への寄稿を準備した。 ④本研究計画の成果発表は、2015年も引き続き行う所存である。5月ポーランドでの国際学会、8月千葉のICCEES世界大会にエントリー(パネル組織も担当)し、準備を行っている。海外での研究成果は心に大きな手ごたえを感じている。さらに成果をとりまとめ、単著刊行と英語査読誌への投稿を目指している。
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