第二次大戦の勝者であるソ連は、冷戦構造の一方の覇者として、戦争の記憶・表象を国民統制の道具として利用してきた。女性は祖国の代理表象として愛国主義喚起に動員された。他方で文芸作品においては伝統的なジェンダー規範から逸脱した女性イメージが、戦争神話に対する異議申し立てとして機能している。そこで、ソ連時代の独ソ戦に関する文学・映画・新聞・プロパガンダポスター、戦争記念碑の調査や資料収集、作家へのインタビューを行い、戦争記憶のあり方と女性の表象の関係性を考察した。これにより、メディアや時代性によって社会的機能が異なること、ナショナリティの観点からはプロパガンダと文芸は共犯関係にあること等が判明した。
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