最終年度に当たる平成25年度は、翻訳等の仕事を抱えていたこともあり、当初予定されていた『生きた貨幣』の分析については、研究を進めてはいたものの論文の形にまとめるには至らなかった。ただし、前年度の『わが隣人サド』研究の成果をもとに『思想』第8号(岩波書店)に論文が発表され、ここでは本研究課題の「クロソウスキーの言語論」についてさらに踏み込んで論じることができた。また、本年(平成26年)4月にはクロソウスキー実弟の画家バルテュスの芸術観について、兄との比較で論じる機会を得た(「芸術のY字路――クロソウスキーとバルテュス」、『ユリイカ 特集バルテュス――20世紀最後の画家』、4月号、青土社)。これにより、クロソウスキーの芸術観をも違った角度から論じることができた。 また本年度は、筆者のもう一つの研究分野である「文学と音楽」というテーマで、書評一件(山田兼士訳『ドビュッシー・ソング・ブック』書評、季刊『びーぐる――詩の海へ』、澪標)と講演一件(「音楽は詩にとってどこまで『他者』なのか?――ポール・ヴェルレーヌとその詩に付された音楽を例に」、清泉女子大学公開講座第31回土曜自由大学「テーマ:音楽」)を行った。 また、博士論文およびその後の研究成果を総合的にまとめた書籍刊行の助成を得るため、平成25年秋に研究成果公開促進費「学術図書」枠で科学研究費の申請を行ったが、4月1日付で交付が内定している。この書籍は『ピエール・クロソウスキー――伝達のドラマトゥルギー』のタイトルのもと、左右社より9月末日に刊行される予定である。
|