研究課題/領域番号 |
24720151
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
佐藤 文彦 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (30452098)
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キーワード | ドイツ文学 / 児童文学 / ベルリン / プロレタリア革命文学 / 社会主義文学 |
研究概要 |
本年度の研究実績としては、前年度に集中的かつ網羅的に収集した資料、とりわけアレックス・ウェディングの一次文献について、その精読と作品分析に費やした点が挙げられる。とくに初期ウェディングの代表作"Ede und Unku"(1931)は、この作品が発表された両大戦間期のみならず、その後のドイツ民主共和国(DDR)時代の受容史を追うこともまた、ウェディングという作家を20世紀ベルリンで展開された社会主義児童文学の歴史に正しく位置付ける上で不可欠であることが確認された。その際、とくに重視したいのは、この児童文学が旧DDRにおいて学校教材として用いられた試みと、映画化(1980)である。 また、本年度もドイツ・オーストリアにおいて文献調査旅行を行なった。本年度は昨年度も訪れたドイツ国立図書館(フランクフルト)に加え、新たにミュンヘン国際児童文学館とオーストリア国立図書館も訪れた。そしてこれまでの調査では見つけられなかった貴重な先行研究に触れられた点は、今後、本研究を円滑に遂行させる上で、また、本研究の先に計画している、両大戦間期ベルリンにおける児童文学の全貌解明を推進させる上で、きわめて有意義であったと考えられる。 次年度は本研究の成果発表が求められるが、これまでの2年間の蓄積をもとに、ウェディングの主要作品について、プロレタリア児童文学から社会主義児童文学への展開を、とりわけ20世紀の都市ベルリンの変遷と絡めて論じる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は20世紀の(東)ベルリンで展開されたプロレタリア児童文学(1920~30年代)と社会主義児童文学(1950~60年代)という、ふたつの政治的児童文学の関係について、両者をつなぐアレックス・ウェディングの文学活動をもとに考察するものであるが、2年目である本年度は、おもに前年度に収集した彼女の作品(一次文献)の精読・分析・考察に充てた。 当初の計画で予定していた「旧東ドイツ社会主義児童文学におけるウェディングの位置付けの把握」については、やや遅れが見られるが、研究目的全体の達成に向けては、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
すでに収集した文献については、引き続き精読・分析を鋭意行う。また、その過程で生じることが予想される文献の不足については、可能な限り新規に収集を行う。 その上で、本研究の最終年度には、学会口頭発表ならびに学術論文の形でその成果を公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入を予定していた図書(洋書)の納入が遅れたためと、資料調査旅行の期間を短縮したため、若干ながら未使用額が生じてしまった。 本研究の最終年度に当たる次年度は、当然のことながら全額使用する。納入が遅れた図書について確実に購入し、旅費の使用も計画的な日程調整を行なった上で執行したい。
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