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2012 年度 実施状況報告書

ドイツ語圏における国民意識とジェンダーの形成についての研究

研究課題

研究課題/領域番号 24720152
研究種目

若手研究(B)

研究機関滋賀大学

研究代表者

川島 隆  滋賀大学, 経済学部, 特任講師 (10456808)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードジェンダー / 国民意識 / ドイツ語圏 / スイス像 / アメリカ像
研究概要

当初の計画にもとづき、一方ではドイツ語圏の文学におけるジェンダーとナショナリティをめぐる理論的な研究を進めた。ただし、当初の予定とは異なり、18世紀末~19世紀初頭の文学よりは、19世紀後半~20世紀初頭の文学の分析が中心となった。主に取り上げた作家は、ヨハンナ・シュピーリ、マリー・エーブナー=エッシェンバッハ、カール・クラウス、オットー・ヴァイニンガー、フランツ・カフカである。その結果、とくに19世紀の後半のヨーロッパ社会において「女性」のジェンダー・アイデンティティが大きく変動し、そこから20世紀初頭における「男性」やひいては「人間」のアイデンティティの再定義の必要性がきわめて広範囲で生じていたことが改めて浮き彫りになった。以上の研究成果を日本独文学会京都支部、日本独文学会、日本比較文学会にて報告するとともに、各学会誌にて論文として公表した。
他方では、これも当初の予定にもとづき、ライン地方の郷土作家ヘルマン・アダム・フォン・カンプが19世紀前半に執筆した作品に着目し、スイスやアメリカなどの「外国」の表象を分析した。18世紀末から19世紀初頭にかけては、数多くの旅行記やフィクションにより、男性と女性、文明と自然、自己と他者といった二項対立的なものの出会いの場としてのスイス像が文学的トポスとして成立していた。このトポスに接続することが、当時アメリカへの移民流出によって農村共同体の解体の危機に瀕していたドイツにおいて、新たに「郷土愛」の重要性を訴えるために有していた意義を考察した。以上の研究成果を日本ヘルダー学会にて報告するとともに、郁文堂からカンプ作品の翻訳を刊行した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画では、とくに理論的研究については18世紀末から19世紀初頭にかけてのドイツ語圏の文学・思想を対象として行うことを予定していた。しかし実際には、ジェンダー・アイデンティティと国民意識の形成の相関関係を考察するうえで、研究代表者の従来の専門である19世紀後半から20世紀初頭にかけての文学・思想を先により詳細に扱うことが、研究プロジェクト全体の問題意識と目標をよりよく照らし出すと判断したため、研究の軸を一時的にそちらにシフトさせた。その結果、18世紀~19世紀の状況に関する理解を深めるという所期の目標に照らすと、ゆっくりとした進行になっているといえる。ただし、理論的研究の方面で、当初の想定をはるかに上回るペースで学会報告と論文公表を行っているため、総合的には「順調」に目標達成へと接近していると判断した。
作品研究に関しては、当初の予定どおりヘルマン・アダム・フォン・カンプ作品の読解を進め、研究成果を学会報告するとともに、作品の訳出よび刊行を完遂した。フォン・カンプに関連する一次資料および二次資料の収集も順調に進行している。

今後の研究の推進方策

本研究の理論的研究の方面では、当初予定していたよりも19世紀後半以降の文学・思想の分析に力を入れたため、18世紀末~19世紀初頭の文学・思想の研究は現時点で比較的手薄になっている。次年度以降はその点を補完する。
それ以外は、基本的に当初の予定どおり研究計画を遂行する。

次年度の研究費の使用計画

ドイツ語話者による校閲を「謝金」として想定していたが、知人によるボランティアで賄ったため、余剰が生じた。また「その他」区分の複写費・郵送費は発生しなかった。
余剰分は次年度において海外研究者の招へい費用に組み入れる予定である。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] オットー・ヴァイニンガーとカール・クラウス―女性嫌悪から男性ジェンダーの再構築へ2012

    • 著者名/発表者名
      川島隆
    • 雑誌名

      思想

      巻: 1058 ページ: 134-151

  • [雑誌論文] ヨハンナ・シュピーリの『ジーナ』―女性の大学教育と職業をめぐる葛藤2012

    • 著者名/発表者名
      川島隆
    • 雑誌名

      希土

      巻: 37 ページ: 38-57

  • [雑誌論文] 人間のような犬と、犬のような人間―エーブナー=エッシェンバッハからカフカまで2012

    • 著者名/発表者名
      川島隆
    • 雑誌名

      日本独文学会研究叢書(『動物とドイツ文学』)

      巻: 87 ページ: 39-54

  • [雑誌論文] Zwischen Richard Wagner und dem jiddischen Theater―Volk, Sprache und Kunst in den Erzählungen Franz Kafkas2012

    • 著者名/発表者名
      川島隆
    • 雑誌名

      ドイツ文学

      巻: 145 ページ: 155-171

    • 査読あり
  • [学会発表] カフカ『あるアカデミーへの報告』とダーウィニズム(シンポジウム:啓蒙と反動)

    • 著者名/発表者名
      川島隆
    • 学会等名
      日本独文学会京都支部
    • 発表場所
      大谷大学
  • [学会発表] ルポルタージュは震災を伝えられるか―J・ハーノとR・ツェルナーの日本滞在記を中心に(シンポジウム:フクシマ後のドイツ文学)

    • 著者名/発表者名
      川島隆
    • 学会等名
      日本独文学会
    • 発表場所
      中央大学
  • [学会発表] 日本におけるカフカ受容の流れ(シンポジウム:『変身』から100年の比較文学)

    • 著者名/発表者名
      川島隆
    • 学会等名
      比較文学会
    • 発表場所
      立命館大学
  • [学会発表] ヘルマン・アダム・フォン・カンプの『アルプスの少女アデライーデ』―スイス像とアメリカ像の意味

    • 著者名/発表者名
      川島隆
    • 学会等名
      日本ヘルダー学会
    • 発表場所
      梅田ちゃやまちアプローズタワー
  • [学会発表] ゲーテを読むカフカ―大文学と小文学

    • 著者名/発表者名
      川島隆
    • 学会等名
      ゲーテ自然科学の集い
    • 発表場所
      立命館大学
  • [図書] 郁文堂2013

    • 著者名/発表者名
      ペーター・ビュトナー(川島隆訳)
    • 総ページ数
      128
    • 出版者
      ハイジの原点―アルプスの少女アデライーデ
  • [図書] NHK出版2012

    • 著者名/発表者名
      川島隆
    • 総ページ数
      100
    • 出版者
      カフカ『変身』:確かな場所など、どこにもない(NHKテレビテキスト 100分de名著)

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公開日: 2014-07-24  

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