研究課題/領域番号 |
24720155
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
森 直香 静岡県立大学, 国際関係学部, 講師 (60611829)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ロルカ戯曲の上演 / ロルカ作品の死生観 / ロルカの死 / 受容研究 / スペイン文学 / 比較文学 |
研究実績の概要 |
26年度はまず、前年度に引き続き、ロルカ戯曲の普遍性と作品の世界観と日本文化との共通点が日本での受容を推し進めた要因であることを明らかにすることを目的とした。具体的には日本で発表された作品の書評、研究の論文・書籍、戯曲の公演評をとりあげ、日本人読者が作品をどのように受け止め解釈したかを考察し、論文としてまとめた。その結果、日本人読者の多くがロルカ作品の新しいスタイル、詩的言語、スペインらしさ、原始的世界観に注目したことが分かった。新しいスタイルと詩的言語はロルカ戯曲のスペイン初演の際にも高く評価された要素であり、作品の普遍的価値と言える。スペインらしさについては、日本人読者は特に作品の原始的世界観の中にこれを見出していた。さらに、日本人読者はその原始的世界観の中でも特にその死生観に惹かれた。これには日本の伝統的死生観と共通する部分も少なからずあっため、読者たちの興味をかきたてたと考えられる。 続いて、作品に原始的世界観に基づいた死生観が表れているという日本人読者の解釈に着目し、そのような読解に影響を及ぼした外的要素について検討した。具体的にはロルカがスペイン内戦直後にファシズム陣営の手によって処刑されたという伝記的事実が作品解釈に影響を及ぼした可能性について考察した。その結果、日本人読者にはロルカが自らの死を予見し、それを作品の中に一種の予言として表したと考える傾向があることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
26年度6月に長男を出産し、26年度4月中旬から3月末まで産前産後休暇及び育児休業を取得したため。
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今後の研究の推進方策 |
27年度は日本文化とロルカの作品世界の共通点を明らかにする目的で、ロルカの死生観と日本の死生観について比較・分析を行う。また、このような死生観の源泉を明らかにするために、青年期の未刊行の作品群に表れている死生観についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度4月中旬より3月末まで産前産後休暇及び育児休業を取得したため、ほとんど研究活動を行うことができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
旅費(スペインでの調査費用)および物品費(書籍、トナー、文房具購入等)に充てる。
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