本研究の目的は、ジェラール・ド・ネルヴァルにおける出典研究をふまえて、19世紀前半のフランス文学における引用、剽窃、創造的模倣の問題を歴史的に再検証することである。まず、19世紀フランスの作家における引用・剽窃の営為と比較する上で、『作家の聖別』(ポール・ベニシュー)などの基本文献を翻訳し、小ロマン派におけるリライトの重要性を確認した。さらにネルヴァルが自らの作品の中に過去の書物を多数収集するのは、創造性の欠如ではなく、むしろ積極的に過去を復元・存続させようとする意識の現れであることを確認し、作家固有の引用の詩学を分析した。
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