本研究においては、エミール・ゾラが1888年に興味を抱き、90年代からプライベートな場面で積極的に撮影した写真を、当時の社会的、思想的コンテクストに焦点をあてて検討し、芸術創造においてこの作家が展開した持論の内実や実際に生みだされたイメージの力について考察を深化させた。私的な絆を写真によって確認し、カメラのシャッターを切り続けていた当時のゾラは、生への執着に突き動かされていた。その点を意識したうえで、ゾラの写真を小説、批評、書簡に照らして分析し、文学と写真のあいだに見られる密接な関係を明らかにすることができた。
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