研究課題/領域番号 |
24720159
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
郷原 佳以 関東学院大学, 文学部, 准教授 (90529687)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヴェロニカ / 比喩形象 / プロソポペイア |
研究概要 |
20世紀フランスにおける文学作品およびレトリック再興の流れにおいて、従来とは異なる新たな「類似性」が提起されたことを証し立て、その意義を究明する、という本研究の目的に沿って、主として以下の研究を行った。 1、20世紀フランス文学における新たな「類似性」の様相として、モーリス・ブランショの小説『死の宣告』(1948)において「ヴェロニカの聖顔布」神話(磔刑前のキリストの顔がヴェロニカの差し出した布に写し出されたという神話)の読み替えと考えられる描写を分析し、論文「ヴェロニカ、あるいはファリック・シスターの増殖 ブランショとセクシュアリティ」(『別冊水声通信 セクシュアリティ』水声社)として発表した。 2、ジャック・デリダによるミメーシス(模倣)論の原点といえる『散種』(1972)を翻訳し(同書所収のフィリップ・ソレルス論「散種」担当、法政大学出版局、2013)、検討した。 3、パリ第8大学教授ブリュノ・クレマン氏は、文学と哲学の境界を越えて「文彩=比喩形象(figure)」、とりわけ「プロソポペイア(活喩法)」に着目することで、書くことにとっての「比喩形象」の根源的性格を明らかにし、新たな「修辞学」を展開している。その思想は、本研究が対象とする1960-70年代の「隠喩」論争と深く関わり、その現代における帰結とも言える。氏のプロソポペイア論『垂直の声』(2013)などの著作を精読のうえ、日本学術振興会の外国人研究者招聘事業(短期)により招聘し、連続講演会を開催し、て紹介した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ブリュノ・クレマン招聘事業に精力を傾注したため。
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今後の研究の推進方策 |
1、当初平成24年度の計画であった、1960-70年代を中心とする「隠喩」をめぐる論争(ジュネット、トドロフ、デリダ、等々)についての調査・検討を行う。さらに、平成24年度に招聘したブリュノ・クレマンの「プロソポペイア(活喩法)」をめぐる研究について調査・検討し、哲学と文学に通底する新たな修辞学の可能性について考察する。研究成果は日本フランス語フランス文学会において開催のワークショップ「来たるべき修辞学――哲学と文学の間で」において報告する。 2、当初平成24年度の計画であった、ジュネット×ドゥギー論争についての調査を行い、発表済みの論文「ミシェル・ドゥギーの「commeの詩学」序説――ドゥギー/ジュネット論争(1)」の続編として論文にまとめる。 3、平成24年度2月に翻訳刊行したデリダの『散種』(1972)における「類似性」の脱構築の様態について検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、平成24年度の計画であった、1960-70年代の「隠喩」論争についての調査・検討を遂行するため、当時の関係資料のほか、修辞学関係の書籍・辞書を購入する。
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