研究課題/領域番号 |
24720159
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
郷原 佳以 関東学院大学, 文学部, 准教授 (90529687)
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キーワード | フィギュール / 比喩形象 / モーリス・ブランショ / ミシェル・ドゥギー / ブリュノ・クレマン / ジャック・デリダ / ミメーシス |
研究概要 |
20世紀フランスにおける文学作品およびレトリック再興の流れにおいて、従来とは異なる新たな「類似性」が提起されたことを証し立て、その意義を究明するという本研究の目的に沿って、主として以下の研究を行った。 1.1960-70年代フランスにおけるレトリック再興の流れを確認し、「文彩(フィギュール)」というものに対する各論者の方向性の違いを明らかにしたうえで、とりわけミシェル・ドゥギーとジェラール・ジュネットの「フィギュール」観の相違を検証し、さらに、ドゥギーの考えを受け継ぐブリュノ・クレマンの「フィギュール」観を明らかにした。研究成果は、日本フランス語フランス文学会におけるワークショップ「来たるべき修辞学――文学と哲学のあいだで」での発表「「文彩」の学から「比喩形象」の学へ――ミシェル・ドゥギーとブリュノ・クレマン」として発表した。また、ブリュノ・クレマンの関東学院大学での講演を翻訳し、『関東学院大学人文科学研究所報』37号に発表した。 2.モーリス・ブランショの文学論および文学作品を物語性の否定と新たな物語観念という観点から村上春樹の諸作品と比較考察し、『早稲田文学』に論文「「物語」と第三の空席――村上春樹とモーリス・ブランショ」として発表した。 3.ジャック・デリダにおけるミメーシス(模倣)論の原点である「散種」(『散種』所収)について、引用とテクストの枠の問題に焦点を当てて考察し、脱構築研究会のワークショップ「ジャック・デリダ『散種』」において、「「散種」と枠(cadre)の問題・序説」として発表した。 4.ジャック・デリダのミメーシス論でもある「蚕」を収めた1997年の著作『ヴェール』(エレーヌ・シクスーとの共著)を翻訳し、詳細な解説を付して刊行した(みすず書房)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
『ヴェール』およびブランショの伝記の翻訳作業に時間をとられたため。
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今後の研究の推進方策 |
1.現代における新たなレトリック論者としてこれまで注目してきたブリュノ・クレマンの『垂直の声』をさらに精読しながら、モーリス・ブランショの「語りの声」という概念について考察し、9月に東京大学でおこなわれるワークショップ「文学と声」で発表する。 2.ミメーシス論にとりわけ注目してきたジャック・デリダの自伝的作品における動物たちの形象について考察し、5月に日本フランス語フランス文学会におけるワークショップ「人間と動物」で発表する。 3.ジャック・デリダの自伝的作品における「涙」の形象について、11月に早稲田大学でおこなわれるデリダ没後10年シンポジウムで発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ジャック・デリダ『ヴェール』およびクリストフ・ビダン『モーリス・ブランショ 不可視のパートナー』翻訳作業に傾注したため当該研究が十分には深められなかった。 ・モーリス・ブランショの「語りの声」概念を検討するため「文学と声」に関わる文献を入手し、精読する。 ・ジャック・デリダの自伝的作品における動物たちの形象を検討するため、広く動物論に関わる文献を入手し、精読する。 ・ジャック・デリダの自伝的作品における「涙」の形象を検討するため、デリダ関連図書および視覚・触覚・盲に関する文献を入手し、精読する。
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