20世紀フランスにおける文学作品およびレトリック再興の流れにおいて、従来とは異なる新たな「類似性」が提起されたことを証し立て、その意義を究明するという本研究の目的に沿って、最終年度は主として以下の研究を行った。 1.1960-70年代フランスにおけるレトリック再興の流れを踏まえたレトリック論者として注目しており、前二年間において招聘および研究発表を行ってきた文学研究者ブリュノ・クレマンの著作『垂直の声』を精読し、翻訳した。 2.上記1を踏まえ、モーリス・ブランショにおける「声」という主題について「イメージ」の問題と絡めて考察し、「セイレーンたちの歌と「語りの声」――ブランショ、カフカ、三人称」という表題で、東京大学で行われたワークショップ「文学と声」において発表した。この発表をもとにした論文は平成27年度刊行の共著『インデックスとイリュージョン――文学と声の現象学』に収録予定である。 3.「類似性」の再考として提示されたモーリス・ブランショにおける「イメージ」について、日本の美術評論家、宮川淳によるその受容と展開を分析し、論文 " Atsushi Miyakawa et Maurice Blanchot -- fascination de l’image " (Cahiers de l'Herne Blanchot) として発表し、さらに、宮川のイメージ論を参照しつつ、サルトルとブランショのジャコメッティ批評を比較検討し、両者の「イメージ」概念の共通性と差異を抽出し、シンポジウム「美術を哲学する」で発表した。 4.前年度ミメーシス論に関して考察した哲学者ジャック・デリダの自伝的作品における動物たちの形象に注目してその文学的読解を行い、日本フランス語フランス文学会春季大会ワークショップおよびデリダ没後10年記念シンポジウム(早稲田大学)で発表した。
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