研究課題/領域番号 |
24720161
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
西岡 亜紀 お茶の水女子大学, 比較日本学教育研究センター, 客員研究員 (70456276)
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キーワード | 日仏比較文化 / 日仏比較文学 / 福永武彦 / 日本近代文学 / 近代学問 / ネットワーク |
研究概要 |
平成25年度も、24年度に引き続き、国内外における成果公表とその準備のための追加の調査・執筆・編集を継続的に行った。 平成25年7月6日、お茶の水女子大学比較日本学教育研究センター主催の第15回国際日本学シンポジウム「フランスへの憧れー生活・芸術・思想の日仏比較」のパネラーとして 「宣教師が運んだフランス―長崎・築地・横浜の近代」を発表、共同討議にも参加(上記は後に論文として26年3月刊行の『お茶の水女子大学比較日本学教育研究センター研究年報』10号に収載済)。なお、本シンポジウムには実行委員として企画・運営にも参画した(1~7月)。7月24日、パリ・ソルボンヌ大学にて開催の国際比較文学会(ICLA)第20回国際会議にて研究発表(" La censure des médias au Japon dans les années 1940 - Les problèmes de traduction"、フランス語)。9月27日、白百合女子大学大学院オムニバス授業「全体と部分ー文学・思想・美術」にて「社会のなかの個人の死~福永武彦『独身者』と『死の島』をつなぐもの~」を講演。平成26年3月27日、日本・スイス国交樹立150年記念国際シンポジウム「シュピーリと「ハイジ」の世界」のパネラーとして「スタジオジブリの出発点としてのアニメ『アルプスの少女ハイジ』」を発表、アルフレッド・メッサーリ氏およびのペーター・ビュトナー氏らとの共同討議に臨んだ。 また、都内の日仏会館等の調査に加え、7月21日~8月1日のパリ学会出張に合せて日本館に滞在し1929~1959年の滞在者を調査、10月31~11月2日には長崎調査と長期の調査も行った。近代の大学教育の基盤の一つとなったフランス語教育の萌芽や1930~40年代の広い分野における日仏交流について探査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、福永武彦をめぐる1930~40年代当時の文学者を中心とする知的ネットワークを構築する予定であった。ところが、調査や成果公表の過程での多岐にわたる分野の国内外の研究者との交流を通し、「ネットワーク」の範囲が広がりつつある。 その結果、当初は将来構想として設定していた、福永たちの学問基盤を規定した幕末以降の近代日本におけるフランス語教育の起源と編成及びそれを支えた宣教師の動向といった縦のつながりへの考察が、口頭発表や出版物で成った。加えて、戦争前後の日本の翻訳検閲に関する国際発表、戦後のテレビや映画作品における近代ヨーロッパの受容と葛藤に関する発表といった横のつながりへの考察にも着手した。これは、本テーマと別に20年来西岡が続けてきた民衆メディアをめぐる研究と純文学研究との「つながり」の一端となる動きである。よりダイナミックな研究テーマへの接続として、大きな進捗を成した。
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今後の研究の推進方策 |
25年度に続き、国内外での成果発表につとめる。『死の島』論の全体像は当初の予定とは異なる点もでるとは思うが、いずれにしても執筆に取りかかる。 成果公表について既に決まっている予定は次の通り。①「社会のなかの個人の死~福永武彦『独身者』と『死の島』をつなぐもの~」を白百合女子大学アウリオン叢書第13号に掲載(9月刊行予定)。②「近代日本のフランス語教育の起源と編成―宣教師の果たした役割」を共著論集に掲載(著者校正済、刊行まち) ③共訳『詩人の世界―ロートレアモンの場合』(仮題)を出版物または報告書として公表(既に完全原稿になっている)このほか、ヨーロッパにおける共同研究への参画(論文執筆)、国内の映像関係者へのインタビューといった出版物の企画を進行中である。 調査は、国内(長崎・長野)を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
パリの滞在費を換算して旅費を算出していたが、調査も兼ねて日本館という学術機関に宿泊したため、宿泊費の計算が半額となった。繰り越し残余は、主にその差額である。 繰越額は25000円と少額なので、下記のいずれかの補助に充てる。 ①国内の成果発表のための出張旅費 ②国内の調査旅費 ③刊行物や論文をまとめるための追加資料の購入
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