最終年度にあたり、これまでの活動を総括する報告を中心に行った。もっとも重要な成果は、2014年度以前から執筆していた以下の2点の原稿の完成と刊行である。①西岡亜紀「近代日本のフランス語教育の起源と編成 ―宣教師の果たした役割―」井田太郎・藤巻和宏編『近代学問の起源と編成』所収、勉誠出版、2014年10月、pp.107‐132。②福永武彦著(西岡亜紀・岩津航共訳)『昭和十五年度東京帝国大学仏蘭西文学科卒業論文 詩人の世界ーロオトレアモンの場合』科学研究費補助金報告書、2015年3月、全126頁。①は近代の1930~40年代の若者の学んだ機関の成立背景についての探査と考察、②は福永武彦がフランス語で1941年に提出した卒業論文の日本語訳と文体模写による資料化である。 上記以外の成果公表には、以下のものがある。①西岡亜紀「社会のなかの個人の死 ~福永武彦の全体小説と「生きる」こと~」白百合女子大学言語・文学研究センター編 ;井上隆史責任編集『全体と部分』(アウリオン叢書14号)所収、2015年3月。②西岡亜紀「書評:岩津航『死の島からの旅―福永武彦と神話・芸術・文学 (金沢大学人間社会研究叢書、世界思想社、2013年)』『比較文学』第57巻、2015年3月(ページ未定)。③シンポジウム「近代日本におけるフランス象徴主義 ―受容・模倣・創造―」にて「セッションII:マチネポエティクの時代」のパネラー、題目「福永武彦におけるボードレール ―「規範」としてのフランス詩―」2015年3月14日(土)、於:学習院大学。 1930~40年代の東大仏蘭西文学科の成立背景の探査に予定よりも時間を割いたため、『死の島』論という集約という当初の計画とは異なる方向性でのまとめではあるが、全体として、当時の若者の知的背景やつながりを具体的に考察することはできた。
|