研究課題/領域番号 |
24720163
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
川島 優子 広島大学, 文学研究科, 准教授 (30440879)
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
本年度は、昨年度行った『金瓶梅』の服飾描写に関する基礎的調査に基づきつつ、『金瓶梅』の服飾描写と人物描写との具体的な関連性についての考察を進めた。具体的には、第六夫人李瓶児が、死後、埋葬される際に履かされた靴のデザイン(鸚鵡が桃を啄む)をめぐって、その暗示性に注目し、典故を調査するとともに、そのデザインを提案した第五夫人潘金蓮と、その潘金蓮によって死に至らしめられた第六夫人李瓶児との関係性を明らかにしようと試みた。典故の調査が思うように進まず、はっきりとした結論を出すには至っていないが、服飾描写を通して人物像および人物関係を構築しようとする作者の意識は感じられ、『金瓶梅』の近代小説性につながるものだと考えている。 9月には台北で開かれた研究会で、「『金瓶梅』の服飾描写」という題目で発表を行い、国内外の研究者と意見交換を行った(8月に上海の復旦大学で開かれた明代文学学会(籌)第九届年会曁2013年明代文学国際学術検討会、および11月に台湾の南華大学で開かれた2013明代文学与思想国際学術検討会においても、一部関連する発表を行った)。また、作品研究に欠かせない版本の調査も行った。『金瓶梅』最古の版本である『金瓶梅詞話』(明刊本)は、世界に三点、故宮博物院、日光山輪王寺、徳山毛利家にのみ所蔵が確認されている。昨年度の徳山毛利家所蔵『金瓶梅詞話』の調査に続き、本年度は台湾故宮博物院にて、明刊本『金瓶梅詞話』の閲覧と調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の基礎調査を踏まえ、より具体的な考察を行った。特に服飾に用いられるデザインが、人物描写や物語の展開とどのように関連しているのかについての考察を行った。また、昨年度に引き続き、『金瓶梅』最古のテキストである明刊本(台湾故宮博物院所蔵『金瓶梅詞話』)の調査も行うことができた。 成果発表としては、9月には台北で開かれた研究会で発表を行った。また8月に上海の復旦大学で開かれた明代文学学会(籌)第九届年会曁2013年明代文学国際学術検討会、および11月に台湾の南華大学で開かれた2013明代文学与思想国際学術検討会においても、一部関連する発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に引き続き、服飾描写と人物描写との関連性について考察を行う。昨年度同様、 ①データベース(四部叢刊、四庫全書、基本古籍庫等)を利用して、過去の文学作品や同時代の作品における色、デザインに関するイメージ、型の存在の有無を明らかにし、『金瓶梅』がそれをどのように取り込み、人物描写に利用しているのかを具体的に明らかにする。 ③戯曲関係の資料を利用しつつ、演劇の衣装と人物像との関連性を調査し、『金瓶梅』への影響を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は、海外出張旅費を別予算から支出したり、購入予定であったソフトウェアが入手できなかったりしたこともあって、次年度使用額が生じた。 本年度は、ソフトウェア等の購入に加え、国内外での発表および書籍での成果発表を行う予定である。
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