本研究は、『金瓶梅』における服飾描写に着目し、服飾描写が人間を描出するひとつの手段として用いられていることを明らかにすることで、『金瓶梅』のリアリズム、近代性を具体的に実証し、中国文学における近代小説の誕生、発展の過程を明らかにしようとするものである。人物と服飾との相関関係を細かくデータ化し、従来の作品や当時の資料とあわせて分析することによって、『金瓶梅』における服飾は、人物形象に奥行きを与え、ストーリーを深化させる手段として意識的に用いられていることを具体的に指摘した。こうした人間描写の手法は、『紅楼夢』をはじめとする後世の文学作品に大きな影響を与えたものと考えられる。
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