研究課題/領域番号 |
24720164
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
太田 亨 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (80370021)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 五山文学 / 抄物 / 杜甫 / 五山版 |
研究概要 |
筆者は、日本中世禅林における杜甫の受容について、①いずれの中国注釈書及び五山版を利用していたのか、②どのように解釈していたのか、③消化したものをどのように自身の詩文に詠出していたのか、と三つの領域について研究を深めている。 本年度は③を中心に調査・研究を行った。現在、国際高等研究所のプロジェクト「宗教が文化と社会に及ぼす生命力についての研究-禅をケーススタディとして-」に参加しており、本プロジェクトで中世禅林において杜甫と禅がどのように結びついていったか研究・発表している。十月には、南北朝時代の禅林における杜甫と禅の関係、特に虎関師錬の詩話に着目し、禅的観点から杜詩をどのように解釈していたかについて論じたものを公表した。これは一昨年にプロジェクト研究会で発表したものである。本年度二月に行われた研究会では、室町時代後期において、杜甫と禅の関係がより明確になったこと、その原因が杜詩の解釈深度・禅僧の文学観によるものであることを論じた。中世禅林を通じて、杜甫がどのように受容されたか、その骨格となる観点・実態を確認することができた。 ②については、慶應義塾図書館に所蔵される『大堂供奉帳』の紙背に書かれている杜詩の抄を調査中である。禅僧の抄であるのは疑いないが、いつ・誰の講抄のものなのか、今後の課題としたい。この調査を進めていくと、自ずと①にも関わってくるといえよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中世禅林における杜詩と禅についての関係を確認することができ、本研究の骨格となる部分の調査・考究がすんだため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度発表したことで、中世禅林の鎌倉時代末期から室町時代末期までの杜詩受容の様相を概観することができた。来年度は発表したことを活字化し公表するようにしたい。室町期以降の杜詩受容について、解明されていない点も多い。禅的な観点以外の新たな観点から杜詩がどのようにとらえられていたか考究したい。 杜詩の抄については、慶應義塾図書館に所蔵される『大堂供奉帳』の紙背に書かれている杜詩の抄の解明を行っていく。できれば翻刻を公表したい。 杜詩に関する五山版は各機関に所蔵されている。どのような書き入れが残されているか、各機関に赴き、閲覧・調査していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
慶應義塾図書館を始めとする貴重書を所蔵する各機関に赴き、必要な資料を閲覧・調査する。そのため、各機関に赴く旅費と、調査する上で重要な貴重書を文献複写する費用が必要となる。主として旅費と文献複写代として使用する。
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