研究課題/領域番号 |
24720165
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大渕 貴之 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 専門研究員 (40614764)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / 中国 / 台湾 |
研究概要 |
本年度は、『白氏六帖』の現存諸版本とその本文とに関する基礎的調査・考察を行なった。 まず、『白氏六帖』諸版本のうち、影印本等が未出版であり日本国内に於いて閲覧できなかった『新雕白氏六帖事類添注出経』本について、10月に台湾国家図書館へ赴き現地調査を行なった。現地では、国家図書館特蔵組編輯の張圍東博士及び中央研究院文哲研究所助研究員の張文朝博士より調査の支援を得て原本の実見調査を行なったほか、全頁複写の許可を得て本課題の研究遂行に不可欠の資料を入手することができた。 また、11月には南京大学文学院において開催された国際学会、東亜文明視野下的中国文学博士生国際学術論壇において本課題に関連する類書研究の一環として、「幕府将軍徳川吉宗所見《図書集成》考」の研究報告を行なった。南京大学文学院の張伯偉教授ほか参会の中国及び台湾の研究者より各地に於ける類書研究の情報を得ることができ、本課題の研究遂行に甚だ資する成果が得られた。特に、天津師範大学古典文献研究所の周延良教授により『白氏六帖』テキストの校合、点校本出版の準備が進められているとの情報は、本課題の進行にも影響する極めて重要な内容であった。 以上、二つの外国出張による成果を踏まえ、本年度後半からは『白氏六帖』諸本の対校よりも年度前半の対校作業において得ていた知見にも基づき、南宋本を基軸に各種版本を使用しつつ『藝文類聚』及び『初学記』に収載される文献との比較作業を行なうことに重点を移した。また、3月には九州大学中国文学会の第265回中国文藝座談会に於いて、「台湾国家図書館蔵『新雕白氏六帖事類添注出経』について」の題で研究報告を行ない、これまで懸案とされていた当該版本の出版経緯と『白氏六帖』諸版本の中での位置づけ、及び本文の特徴について発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度前半に行なっていた『白氏六帖』の北宋・南宋両刊本の本文比較は遅滞する傾向にあった。しかし、それまでの作業で得た知見と外国出張で得た『白氏六帖』本文に対する中国での最新の研究動向を踏まえれば、南宋本を基礎として諸本を参照しつつ『藝文類聚』及び『初学記』との本文比較を行なうことで、本課題の主要且つ独創性を持つ部分の研究遂行は可能であることが明確となった。 また、台湾国家図書館所蔵『新雕白氏六帖事類添注出経』本についての新しい見解を学会報告のかたちで提示できたことは、本課題遂行上、一定の達成度を担保するものである。
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今後の研究の推進方策 |
当初平成24年度に計画していた定本『白氏六帖』の作成は達成されていない。 しかし、作業過程で得た知見及び外国出張で得た成果に基づき、南宋本を中心とする『白氏六帖』の本文と『藝文類聚』及び『初学記』収載の本文との比較作業へ本格的に移行する。これによって、本課題の主眼であり、最も重要となる平成25年度以降の当初計画が実施、進行可能となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
北京所在の国家図書館における現地調査を予定していたが、研究機関の異動に係る諸事情により当該外国出張が未実施に終わったことにより、次年度に使用する予定の研究費が生じる結果となった。 次年度において、外国出張を実施するとともに、当初予定の平成25年度の計画内容を実行に移したい。
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