本研究は、東アジア文化圏の成立経緯を究明する際、最も重視すべき「日本現存する旧鈔本文選」を研究課題とし、平成24年度から平成26年度に渡って、〔1〕旧鈔本文選周辺資料の整理と研究;〔2〕九条本を中心とする文選旧鈔本の本文及び書き入れ注の整理と翻刻;〔3〕文選集注の成書背景と編纂経緯に関する研究;〔4〕国外関係学者を招聘し、共同研究を行う;という四つの課題に分けて調査及び研究を行った。最終年度においては、具体的に以下のような成果を得られた。①従来整理されていなかった九条本文選の本文及び書き入れ注を整理して翻刻し、その一部を公刊した。なお、未公刊のものに関しては、これから可能な限りに引き続き順次公開してゆく。②新資料を発掘し、従来解明されていなかった集注文選(重要文化財)の成書背景及び編纂経緯に関する独自の仮説を提出した。また、日本における独自の文選学の構築とその思想背景に関しても新たな説を提出した。③日本旧鈔本資料に基づき、隋唐文選学の形成と展開に関して新説を提出した。④積極的に海外の学者と連携し、広島大学所蔵の文選資料を中心として共同研究を行った。また、共同研究の成果として学術講演及び論文を公刊した。⑤テレビや新聞などのマスメディアと協力し、積極的に本研究によって取得した研究成果の社会還元を果たした。
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