研究課題/領域番号 |
24720167
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研究機関 | 二松學舍大學 |
研究代表者 |
松浦 史子 二松學舍大學, 文学部, 講師 (80570952)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 和林格爾後漢墓 / 瑞祥 / 『山海経』 / 漢魏 / 受容 / 『水経注』 / 内モンゴル / 画像墓 |
研究概要 |
● 基本研究とその成果 『山海経』の神話世界は、漢魏以降の東アジア文化圏の社会・文化・政治に大きな影響を与えたが、その研究は十分ではなかった。これに対し本研究では、主に、漢魏晋南北朝時代に大きな政治・文化的影響力を持った「瑞祥」との関わりから、該期における『山海経』の異形の動植物の受容について考察を進めている。本年度は、明治書院編集の『日中文化大辞典』(2013~14年度中に発行予定)に於いて、『山海経』及び『水経注』の項目を担当。前者では、申請者による漢魏晋南北朝に於ける『山海経』受容研究を、従来の『山海経』研究に位置づけた。さらに『山海経』と基盤を同じくする『水経注』の項目では、主に六朝文学との関わりから、執筆を行った。 ● 『山海経』図像調査とその成果 本年度は、主に後漢時代に於ける『山海経』の受容の一側面を探る試みとして、中国内モンゴル自治区和林格爾後漢墓の瑞祥図像調査を行った。調査に当たっては、陝西省考古研究所院長・王煒林氏、および内モンゴル自治区考古研究所所長・陳永志氏の協力を得た。生憎、該墓の大幅な修繕を行っているため現地調査は不能であったが、当該壁画を二倍の大きさに拡大した模本を間近で調査させてもらう機会を得た。当博物館研究員の話では、実際の壁画もかなり落剥が激しいため、瑞祥図の傍題・図像ともに判別不能なものも多いという。そのせいか70年代の報告書とは図像・傍題ともに異なるものが多数あった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度より、二松学舎大学に専任講師として奉職した。一年目で大学の校務などに不慣れなこともあり、校務・授業などに予想以上に時間を割かれた。本年度はその欠を補うべく、とくに文献調査の促進と、研究成果の国内外での発表に力を注ぎたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の第二年めである平成25年度中には、主に、北朝に於ける『山海経』受容の一形態を探るため、吉林省の集安古墳壁画にみる神話的瑞祥図を調査の予定。敦煌の瑞祥壁画に、類似の『山海経』的な異形図が見えることから、歴史学の分野では当該墓の制作者に、両者(敦煌の瑞祥壁画・集安の瑞祥壁画)を繋ぐ中間項目として、北朝・後秦王朝の存在が指摘されることに注目。フィールド図像調査にあたっては、陝西省考古研究所・王煒林院長の協力を得る。王院長は吉林大学の卒業生であるため、現地考古研究所に縁故あり、とのこと。 本研究では、文献・図像の双方からの総合的検討を予定している。文献調査については、日本にのみ現存する貴重な瑞祥志(唐代)として、国内外の研究者から俄に注目され始めた『天地瑞祥志』の読解を進める(『天地瑞祥志』には『山海経』の引用が多い)。
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次年度の研究費の使用計画 |
① 夏期~秋期の大型休みおよび学園祭シーズンを利用し、中国吉林省集安古墳墓にみる神話的瑞祥図のフィールド調査を行う(5日~10日間の予定)。→海外渡航費用・謝礼・・・20~30万。 ② フィールド調査で蒐集した図像を現像、整理するための、現像代・工具用ファイル・メデイア等購入費用。→5~10万円 ③ 春期~秋期にかけて、集安古墳墓およびその比較対象である敦煌の魏晋壁画墓に関連する図録・文献資料を収集・分析(中文書を含む)。→ 20~25万円 ④ 国内学会発表→ 10万 ⑤ その他雑費
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