本研究の目的は、近代の神秘主義・象徴主義の潮流がヨーロッパのインド学と関わりながら如何に生まれ、モダニズム芸術表現へ展開したのかを探究し、また、それがどのように民族主義や民族独立運動への作用をもたらしたかについて解明することである。当初四年計画の初年度となる予定であった本年は、とりわけ、インドと日本、そして神智学協会に深く関わって国際的に活躍した象徴主義詩人たちの思想と行動・社会活動を中心にして、東西の詩学の融合の実態を解明していく方法を模索するため、インドで調査と資料状況の把握を行った。また国内外で積極的に口頭発表を行って、テーマが関連する研究者たちとの連携作りに尽力した。 1)文献資料の収集・調査 (1)インド(デリー、ハイデラバード)での調査(2013年8月)。 (2)その他、国内外(東京、広島、下関、プサン)での調査と視察(2013年7月、10月、11月、1月)。 2)インドでの口頭発表と、研究者との連携の模索。 (1)デリーのインド国際センターで行われた会議では、本研究の方法や目的について、また象徴主義詩人らと神智学や神秘主義思想との関わりに関する現在までの調査状況を口頭発表において披露した。とくに、米・コロンビア大学や、印・デリー大学の教授陣から今後の研究方向や問題意識に関する有益なコメントをいただき、国際的な共同研究課題について議論した。 (2)国内においては、5つのシンポジウムや研究会で口頭発表し、他の発表者やディスカッサントらから、本研究に関する情報や知見を得て、また神智学研究やその他の専門的な調査が必要な課題の共同研究の連携について議論した。 (3)研究代表者の海外の研究機関への異動に伴い、科研費としての本研究課題は終了することとなるが、本研究内容をさらに発展へと結びつけるために、現在取り組んでいる成果と方法論を広く問い、さらに他地域研究を主眼としている類似の問題意識を持つ多数の研究者と対話するため、第20回国際比較文学会(ICLA)の国際大会(パリ・ソルボンヌ大学)における口頭発表を行う予定である。
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