本研究は、日本語会話における相手の評価・意見に対する同意・非同意の強弱が、どのように相互行為の中で公然化されていくか、そのプロセスの解明に焦点を当てた研究である。本研究では、通常、分析対象として切り離されて捉えられている言語要素と非言語要素(視線、表情、身体動作など)とが、会話参加者が行う特定の社会的行為(同意・非同意)を構成するために統一体として機能しているものとして捉え、言語要素と非言語要素の同時使用に着目し、特に同意・非同意の強さがどのように構成され、可視化されていくかを明らかにしていくことを目指している。 平成27年度は、平成26年度に引き続き、「非同意の強さのバリエーションとその構築プロセス」の分析を行い、論文を投稿すること、さらには、本研究の集大成として、「同意・非同意のの強さのバリエーションとその構築プロセスの相違」を明らかにし、学会発表及び国際雑誌への論文投稿が計画されていた。 当初先に計画されていた研究が遅延していたこともあり、「非同意の強さのバリエーション」については十分な考察ができなかった。結果として、最終年度も同意の考察が中心になったが、新たな発見がいくつかあった。一つは、同意をする際の視線のパターンにも同意の強さの違いに応じて、複数あることが導き出された。もう一つは、「強い同意」を公然化させる際、通常、言語要素と非言語要素を併用させることで、その強さを可視化させるが、今回の新しい発見として、同意話者は、非言語要素をあまり用いずに、音声を巧みに使い、「聞かせること」に志向して強い同意を公然化する場合と、逆に言語要素では「普通の同意」(例えば、「そう」)であっても非言語要素を多用することで「見せること」に志向して強い同意を公然化する場合があることを導き出せた。前者は「第14回国際語用論学会」で発表し、後者は「第36回社会言語科学会研究大会」で発表した。
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