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2013 年度 実施状況報告書

琉球語奄美方言文法記述のための基礎研究

研究課題

研究課題/領域番号 24720180
研究機関広島経済大学

研究代表者

重野 裕美  広島経済大学, 経済学部, 助教 (70621605)

キーワード琉球諸語 / 奄美方言 / 危機言語 / 文法記述
研究概要

琉球諸語研究は日本語の文法範疇の枠組みを利用しながら,独自の研究手法,用語に従った記述がなされてきた。この研究手法によるデータでは,日本語や日本語の文法知識を知らないと,データを利用することが困難である。本研究では他集落,他言語との比較研究も念頭に入れながら,バランスのとれた章立てや文法記述の手法を定めるための基礎的研究をおこなう。その他にも,琉球語奄美方言の記録・保存・継承に役立てる文法書ならびに解説書の作成をおこなうことを目指す。具体的な研究項目は,①博士論文で取り扱った琉球語奄美方言敬語法の研究成果の発展,②フィールドワークによる総合的な文法記述書の作成,そして③地元還元・方言継承に資することができる一般向け解説書の作成,の3つである。
本研究計画は三年を予定しており,その遂行過程は次の六つの段階に分かれる。第一段階として「琉球諸語の文法範疇認定のための先行研究・文献の調査」,第二段階として「文法記述の手法や記録・分析に関する情報収集」,第三段階として「フィールドワークによる琉球語奄美方言の文法項目調査と自然談話資料の収集」,第四段階として「調査から得られた資料に基づき,文法範疇の定義・認定を皮切りに,音韻,形態,統語,談話と,段階的に分析を進める」,第五段階として「前段階の分析を類型論的観点から整理し,理論家や他言語の専門家にも役立つ文法記述書の作成」,第六段階として以上の作業を基盤にした「一般向け解説書の作成」である。
本年度は,第三段階,第四段階の目標を達成するために,フィールド調査から得られたデータを基に,浦方言の音素目録作成や動詞の活用体系の解明等に努めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在までの達成度を研究項目に沿って述べる。
本研究計画は3年を予定しており,その遂行過程は次の6つの段階に分かれており,平成25年度は,第3段階として「フィールドワークによる琉球語奄美方言の文法項目調査と自然談話資料の収集」,第4段階として「調査から得られた資料に基づき,文法範疇の定義・認定を皮切りに,音韻,形態,統語,談話と,段階的に分析を進める」ことを目的とした。
本研究で目指している文法記述書は,音素から複文構造までの言語体系全体の概要を示すことを目指している。
第三段階を達成するために,文法記述の基本単位(音素・音節構造・語・品詞分類等)を定義するため,奄美大島浦集落を中心とした臨地調査を行った。特に,中舌母音や語頭の喉頭化音の有無が語の弁別に影響するため,どこにその音が現われるかに注意を払いながら,500語程度の基礎語彙調査をとおして浦方言の音素目録を作成した。対象地域の特色ある文法事項を可能な限り取り上げるために,対話資料や昔話も収録し,より自然談話に近い資料の収集に努めた。
第四段階を達成するために,調査から得られた資料に基づいた文法範疇の定義・認定・分析調査から得られた資料に基づき,対象地域の文法範疇の定義や認定をおこなうことに努めた。理論的な分析をおこなうために,関連の研究会や学会等に積極的に参加し,そこで得た手法を本研究の分析に反映させた。第三段階と第四段階は,相互に補充・補完する関係となる。また,隣接する集落や同じ奄美方言内である請島方言,与路島方言の調査もおこなうことで奄美方言の特色を浮き彫りにすることを心掛けた。

今後の研究の推進方策

今後の研究推進方策を年度計画に沿って述べる。
平成26年度は研究計画の第五段階と第六段階にあたる。第五段階として,「類型論的視点に基づいた文法記述書の作成」を目指す。例文は,分節ごとに分かち書きを行い,一行目に国際音声記号による音韻表記(IPA表記),二行目にグロス(文法的意味)をつけ,三行目に日本語による直訳または意訳を記す。「=」は接語境界,「-」は接辞を示す。グロスのつけ方や例文の提示方法については,マックスプランク進化人類学研究所のLeipzig Glossing Rulesを利用する。さらに,第六段階として「一般向け解説書の作成」を目指す。言語研究者だけではなく,琉球諸語に興味をもつ人や琉球語話者に読みやすくするため,内容を容易にした一般向け解説書を作成する予定である。表記法は,将来,話者自身による記録を実現するためトヨタ財団の助成を受けている「琉球諸語表記法プロジェクト」(代表:小川晋史,期間:平成24-25年度)で作成した表記法を利用する。例文は,より話者の生活実態に沿った内容を選定する。
以上の内容を進める予定だが,浦方言の文法項目全体を網羅するには多くの調査時間が必要である。また,データ量やどれだけ詳細に書くかによって項目に偏りが出てくる可能性がある。調査方法や記述方法についての疑問や,分析・解釈の妥当性については,研究会等に積極的に参加し,議論を重ねることで解消する。全体をバランス良く記述することが難しくとも,浦方言の音素目録,動詞・形容詞の活用体系の記述は達成できるよう努める。

次年度の研究費の使用計画

次年度使用額が生じた理由として,調査の日程調整がうまくいかなかったことがあげられる。話者との日程が合わなかったため,予定していた調査期間が短くなったことが原因である。そのため,旅費として計上していた助成金が余る結果となった。
平成26年度は,研究項目の第五段階として「記述文法書の作成」,第六段階として「一般向け解説書の作成」を目指している。平成25年度で生じた助成金と平成26年度の助成金を合わせて,主に文法項目の確認調査費にあてる。さらに,記述文法書および,一般向け解説書の印刷費用として助成金を使用する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] 北琉球奄美大島佐仁方言の敬語形式2014

    • 著者名/発表者名
      重野裕美
    • 雑誌名

      広島経済大学研究論集

      巻: 36巻 ページ: 75-85

  • [雑誌論文] Amami Nominalizations2013

    • 著者名/発表者名
      Masayoshi Shibatani,Hiromi Shigeno
    • 雑誌名

      International Journal of Okinawan Studies

      巻: 4巻 ページ: 107-139

  • [雑誌論文] 鹿児島県瀬戸内町与路方言の敬語形式2013

    • 著者名/発表者名
      重野裕美
    • 雑誌名

      広島経済大学研究論集

      巻: 36巻 ページ: 45-56

  • [学会発表] 琉球方言における敬語形式の分布とその展開-奄美大島方言を中心として-

    • 著者名/発表者名
      重野裕美
    • 学会等名
      2013年度(第36回)沖縄言語研究センター・研究発表会
    • 発表場所
      沖縄国際大学
  • [学会発表] 琉球方言における敬語形式の分布とその特色

    • 著者名/発表者名
      重野裕美
    • 学会等名
      日本語学会中四国支部2013年度大会
    • 発表場所
      広島大学
  • [学会発表] ことばを記述するとは-北琉球浦方言を中心として-

    • 著者名/発表者名
      重野裕美
    • 学会等名
      平成25年度経済学会第8回研究集会
    • 発表場所
      広島経済大学

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公開日: 2015-05-28  

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