研究課題/領域番号 |
24720187
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
佐々木 美帆 慶應義塾大学, 商学部, 准教授 (80400597)
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キーワード | 言語学 / 認知心理学 / バイリンガル / 第二言語習得 / 脳側性 / 手話 / 国際情報交換 / イギリス |
研究概要 |
二つの言語の習得と認知プロセスの変化の関係性に言語学的な観点から焦点を当てる本研究では、日英バイリンガルと、更に多角的な二言語の組み合わせの使用者の実験データ収集を行い、二言語の言語知識、言語習得時期、使用環境によってどのように認知プロセスが変わるのかを科学的に分析することを試みている。2年目(平成25年度)の研究実績としては、大きく以下の4項目があげられる。 1.ロンドン大学University College LondonのMacSweeneyらとロンドン在住の日英バイリンガル34名について日本語と英語のプロセスの違いを調査するために、意味および音韻流暢性課題を用いて脳側性を測定した。英語圏在住3年以上で英語を日常使用している方を対象とした。流暢性課題のデータおよび脳側性データをもとに現在分析中である。 2.日本手話母語話者の日本手話における指文字の使用と、日本語の読み書きの学習についてろう者10名にインタビューを行った。結果、ろう者の言語学習において指文字は日本語のかなの学習より遅れて学ぶ傾向があることがわかった。その理由は、インタビューを行った方々の子ども時代に建設的に手話を学ぶ教育環境がなかったという点もあげられる。漢字の指文字の調査も行い、日本手話と日本語のレキシコンにおける指文字について考察する。 3.平成24年度に行った英語多読による日本人英語学習者のリーディングスキルの変化についての眼球運動の実験結果をIris conference (英ヨーク大学)にてポスター発表'Extensive reading and development of L2 learners' reading efficiency: an eye-movement study'を行った。 4.8月にアムステルダムで行われたヨーロッパ第二言語学会に参加し、第二言語習得研究者と意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、日英バイリンガルと、更に多角的な二言語の組み合わせの使用者の実験データ収集を行い、二言語の言語知識、言語習得時期、使用環境によってどのように認知プロセスが変わるのか分析をしている。日英バイリンガルのデータとしては、ロンドン在住の日英バイリンガルの言語流暢性課題データおよび脳側性データを収集できた。神経科学的なアプローチでバイリンガルの言語と認知について調査する実験を、方法論を学びながらfTCDという言語研究においてまだ新しい機器を使用したために、準備に時間がかかり実験課題も当初予定していたものとは違うが、予定通り30名以上のデータを収集することができた。 多角的な二言語の組み合わせという意味では、日本人ろう者の指文字と日本語と読み書きの習得について基礎データとなるインタビューを行うことできた。またロンドン大学滞在中に欧米での最先端の研究に触れる機会が多くあり、特に現在の脳科学におけるバイリンガル研究およびろう者の読みに関する分野の理解が深まった。読みの発達においてアルファベット言語使用者の場合、リップリーディング(読唇)のスキルを重要視する傾向があるが、日本語においてはどのくらい影響があるのか検証が必要である。 また、研究発表として日本人学習者の眼球運動データを読みの発達と関連づけた検証を行った。このようなアプローチは新しく今後データを追加していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、これまでの流れを継続し、①実験デザインの改良と追加の実験を実施すること、②国際学会等で発表および研究者と意見交換を行うこと、そして③これまでの成果を論文にまとめて国際学術誌に投稿すること、を計画している。実験では、昨年度イギリスのUniversity College Londonのラボにおいて行ったfTCDの実験をもとに、同じ日英バイリンガルを対象に読みのタスクを行いたい。8月にUCLの共同研究者と、可能であればEEG(脳波)、または前回と同じfTCD(脳血流)の機器を使用し今までのバイリンガルの音韻情報プロセスに注目した単語認知実験を改訂して実施する。 また、昨年度の実験準備において手話母語話者(ろう者)を含む日本語の第二言語使用者を対象とする場合に、言語の習得レベルを測る指標としての標準的な言語テストを調べたが見つからなかった。言語実験を行うためには、そのような指標が必須となるため第二言語である日本語や英語の読解能力を測るテストを作成する必要がある。これについてもUCLの日本人研究者と作成を検討中である。 収集したデータの学会発表に向けての準備、および学会発表したものについては、バイリンガルの言語と認知プロセスの関係性について論文にまとめ、国際学術雑誌に投稿する準備を進めていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
ロンドン大学に研究で滞在したため、設備備品および消耗品等の購入がなかった。また学会等で行ったヨーロッパへの外国旅費も少なく済んだ。 4~6月、実験設備の補充のための備品および消耗品、書籍等の購入を行う。7~9月、実験(イギリス)および学会・ワークショップ(チェコ)等の旅費および脳実験の研究参加者と研究者への謝金支払。10~12月、眼球運動の実験のための消耗品および謝金支払。1~3月、追加実験および論文発表のための旅費。
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